ライザップは傷つかない

RIZAPグループは、2019年3月決算で約193億円の赤字を出したことで、有象無象の意見が蔓延していますが、水に落ちた犬を打てとばかりな風潮のようです。
論調を読んでみると、非常に非論理的なことばかりなわけですが、総じて事実誤認が多いようです。

RIZAPグループについては、閾値を超えていますので、フォーラムで書く程度にする予定でしたが、節目の1つだと言う事で再度言及します。

RIZAPグループに関しては、例え足踏みが起こっても、既に成長の軌道がほぼ確実になっていますので、長期投資家の皆さんはあまり心配はされていないかと思います。
まず、BtoC取引を行うほとんどの企業は、ブランド力が傷つかない限り、あまり心配がないという原則があります。これはバフェット氏も重視しているようです。

では、そのブランド力が傷つく可能性があるかと言う事ですが、ダイエットの技術力と言いますか、データーとその解析の力に追いつけるところはありません。
以前からトレーナーを引き抜かれても大丈夫と豪語しているコンピューターアルゴリズムは、ほぼ確立されています。

現在では三週間目の段階で、このままトレーニングを行うとどうなるか、約9割の確率でコンピューター予測出来るようになっているそうです。ですから、必要なら軌道修正が出来るわけです。
東大を始めとする各大学や研究機関との数多くの共同研究も成果を上げていて、すでに追いつけるところはありません。希有なジムです。

格安をうたい文句にする小さなパーソナルジムでは、どうしてもトレーナーの勘に頼り、単なるダイエットは可能でも、要望を取り入れた理想的な体型に持っていくことは難しいでしょうし、店舗展開はどうしても確保出来る優秀なトレーナーの数に依存します。
RIZAPでは、トレーナーの勘に頼りませんから、コミュニケーション力に注目して採用し、教育が出来るわけです。

負ののれんは見せかけ?

M&Aをした場合に、買収した会社の純資産額を下回る価格で買収が出来た場合、その差は負ののれんとして利益計上されます。

今回の赤字決算を受けて、見せかけの利益のメッキが剥がれたと言われますが、経営や経理と言うものがよく分かっていない方が、うたい文句のように執筆する場合が多いようです。

RIZAPグループ(株)は国際会計基準ですから、負ののれんは営業利益として計上されます。これが日本基準であれば、特別利益になります。
どちらにしても利益計上をするわけですし、実際に利益です。
キャッシュが入ってこないことを問題にされる方もいますが、キャッシュが入ってきて、そのお金で資産を買い求めれば、経営的には同じ事です。

さて、そもそも割安で買収できる理由は多くの場合、買収先が赤字を生んでいるからです。
言わば、この赤字の分を埋め合わせる持参金を負ののれんとして受け取っていることになります。

負ののれんの範囲内で赤字を止めることが出来れば、買収事業としては成功です。
そうで無ければ、不成功な訳ですが、もちろんその後大きな利益を上げることが出来れば、成功とも言えます。

それはともかく、買収した後の赤字は、国際基準でも日本基準でも営業赤字として計上されます。
見せかけの利益もなにも、負ののれんで受け取った利益は、その後、その会社の赤字が止められなければ、連結以降、営業赤字となり、営業利益から減じられます。持参金を使うわけです。
つまり、継続的にM&Aを続けているRIZAPグループ(株)のような企業にとっては、時間差で各企業間で常にプラマイになり、一時的に利益を上げたように見せかけるために、毎年M&Aを調整するということは事実上不可能です。
実際の実務を知らない方が、見せかけのようなことをムードで言っているわけです。

正ののれんこそ

では、これが正ののれん、つまり、のれんであったらどうでしょう。
この場合、この会社は利益を上げていますので、買収した後も貢献するということで、高いお金で会社を買うわけです。

会社の純資産より高く買い取った場合、この差はのれんとして、無形固定資産として計上されます。
一応数字上資産となりますが、キャッシュでも現実的な資産でもありません。これを取り出して売却も不可能です。

さて、黒字になりました。営業黒字が計上されます。利益ですね。
しかし、会社を買収した時の割高に買っている部分は、資産として計上されています。
考えて見て下さい、割高に買っていますので、黒字になり利益になりましたら、帳簿上だけの存在しない資産はプラマイして消さなければ成りませんが、そうなっていません。
のれん資産は、日本基準では20年掛けて償却します。国際基準では意味がなくなったなどの特別な場合以外償却しません。

はてさて、どちらが見せかけの利益(資産)でしょうか。

実際の会計や経営では、この正ののれんに気を付けます。資産があるように見えても、実際は債務超過という場合もあります。
正ののれんが多い企業は要注意なのです。

負ののれんは経理上は明らかになっています。ですから、財務諸表を読むときに注意をするのは、正ののれんです。
これは投資家でも経営者でも同じ事なのですが、ムードで考える程度の方は逆に捉えています。

どのみち日本基準でも、国際基準でも、のれんの処理は、会計上の辻褄合わせに過ぎません。経理上の方便なのです。事実上どうなっているかと言うことに注目する必要があります。

本業とは

RIZAPグループ(株)は、持株会社ですから、本業はグループ企業の管理です。

そもそも10年以上前、ライザップグループが健康コーポレーションとして、札幌市場に上場したころ、表明し描いていた戦略図があります。
それは、「心身、医療、教育、食品、環境、資本、情報」の各分野を子会社群で網羅するというものです。
その後、もっと具体的な戦略図に何度も書き換えられています。

元々、コングロマリット企業を目指していた会社ですので、本業というのは、多角的企業です。

ヘルスや健康領域に特化せよという意見もありますが、会社のビジョンそのものが「自己投資産業でグローバルNo.1ブランドとなる。」ということですので、健康だけを謳っているわけではありません。
健康そのものも、体の健康だけを意味しない、心の健康もターゲットと常々表明してきた企業です。

これもダイエットの子会社のRIZAP(株)が有名になった所為ですが、外野はうるさいとしか言いようがありません。

長期投資家の視点で言えば、こうした企業の成長限界、利益限界は高く、投資に相応しいものです。

成功を続けてきた企業

前年、赤字決算になりましたが、元々大きな成長をしてきた企業です。

M&Aが悪いように執筆される意見も散見しますが、多くの企業が行っており、もっと日常的に行っている企業もあり、極論に過ぎないと思っています。
RIZAPグループがこれだけ大きな会社になったのは、このM&Aの成功に寄ります。
特に相当な割安価格で赤字会社を買い、黒字化すると言うのは、秀逸なアイディアです。

今回、早急に立て直せなかった、やや大きな赤字企業があり、構造改革に踏み込んだわけですが、黒字で数年掛けてソフトランディングも可能であったものを、ハードランディングで行ったに過ぎません。

2019年度決算で、資産圧縮を中心に赤字計上をしましたが、400億円以上の現金、自己割賦による債権も100億円以上持っており、DEレシオは1.2倍であり、1以下が望ましいと言われますが、充分優良です。
それだけでなく、非常に安価な株式取得により、上場子会社だけでも数百億円の子会社株式の簿外含み益があります。なお、売却して含みを吐き出す事はしなくても、担保価値は現実に存在するわけです。
数十人だった従業員も7千人あまり、連結企業も80社を超えます。
今回の赤字相当と該当企業を考えると、多くの子会社は黒字であるか、些細な赤字であることが分かります。

優秀な社長であることは、新将命氏も松本氏も言及されていますし、過去の要所要所での決断や行動などを考えると、経営アイディアに優れた優秀な社長と言う事が分かります。
社業を機能面(自己投資産業)で考えると言う瀬戸氏の捉え方も、おそらく今までの経営者にない着眼点です。

また瀬戸社長は、経営の世界では典型的な年寄りたらし・人たらしと呼ばれる部類の社長です。
彼の周りに優秀な人材が集まり、各界の重鎮から可愛がられたりしています。ソフトバンクの孫正義氏もそうであったようですが、何かあれば、助けに入る実力者が出てきます。
これは若くても成功した創業者に多く、望んでも得られない才能です。

RIZAPグループはSBIの北尾社長も言及しているように、秀逸なマーケティング力を持っている企業です。
これがM&Aした企業の再建にも役に立ってきたわけです。

成功した企業であり、こう言う企業の成長ストーリーは、まだまだ続くはずです。

踏み切った圧縮

大きな赤字企業のジャパンゲートウェイやタツミプライングは売却をしており、店舗閉鎖も2年分を計上しています。
ワンダーコーポレーションの赤字も大きいかったのですが、これは資産の評価替え、及び店舗閉鎖の特損を計上したもので、営業赤字が大きかったわけではありません。

心証としては、ぱど・サンケイリビングの赤字が払拭出来るかと言う事が気になりますが、その他、大きな赤字を生みそうな企業はありません。
今期は、成長投資などを行い営業利益32億円、その他経費等で、利益5億円と言う事です。

これは最低であると説明会で何度も言及されていましたが、私もそう思います。
もっと多くの利益、もしくはもっと多くの投資が可能であるのではないでしょうか。

影響の大きなワンダーコーポレーションでも、半年売れていないDVDやCDなどを1円で評価替えをしているわけですが、閉店セールなどで千円程度で売れているようです。
当然のことですが、引き取り業者でもすべて1円でしか引き取らないと言うこともありえません。
1円以上では、売れるわけで、平均100円でも、簿価の100倍になります。同様にアパレルでもゴミとしての破棄は最後の最後です。

2年分の店舗閉鎖費などのかなり極端な引き当てをして、約193億円の赤字を作った(作成した)わけです。
逆に言えば、今期は余程の事が無ければ、黒字にしか、成りようがないとも言えます。
また、来期は構造改革費用の消滅、R50(1000億円程度の経費の中から50億円を削減する内部の運動)の進展、及び子会社等の成長で、相当の黒字が見込めると考えています。


決算説明会資料