TSRのお話

TSR(Total Shareholders Return)と言う指標があります。
米国で注目されていた指標で、この指標で取締役の報酬を決める重要な指標とも言われるそうです。

今日はTSRに付いての感想程度のお話です。

TSRとは

TSRは、当サイトの「とある株式投資用語集」のTSRの項目を見て頂くとして、日本語では株主総利回りと言い、ある一定期間の株価上昇と配当を足して、利回りを出す物です。

TSR(%)=(1株当たりの配当総額+対象期間経過の株価)÷始めの株価

始めの株価と言うのは、投資額と言い換えてもよろしいでしょうね。

概ね長期投資の指標とも言えるのかも知れませんが、期間の取り方にも寄ります。

例えば100円で買った株式が、5年間5円配当を出し続けると、総配当金額は、25円になります。
株価は紆余曲折がありましたが、5年後は110でした。

すると、25円+110円で、135円です。
この135円を始めの株価の100円で割りますと、1.35で×100で、135%です。
(世間的には株価の上昇額で計算する向きもあり、その場合は、35%です。)

トータルリターンや株式益回りに少し似ています。
ただし、トータルリターンのように、利益総額としての配当再投資による複利などは考えません。あくまで銘柄単体の評価です。
株式益回りのように理論的な収益期待を出しているわけではなく、過去の実績で出します。

新しい指標として

このTSRは、最近、日本でも注目され初めています。
その理由は、金融庁が今年度の決算、令和元年から、有価証券報告書に、過去5年のTSRを記載することを義務化したからですね。

この注目のされ方は、以下の2つに大別されます。

  1. 株主の実際の投資利回りが白日の下に晒される指標。
  2. 新しい投資銘柄選びの指標。

どちらもそうでしょう。

しかし、私は単純に会社の成績の指標として見ています。

会社が求められる物の1つ

当社の目標はROEいくつで、達成しています、配当利回りも配当額なども、株主の期待に応えていると、会社側がよく引き合いに出します。
ところが株価は、「市場に聞いてくれ」、配当も持続的にうんぬん。

まあ、それはそうかもですが、ぶっちゃけ、株主にどれだけの利回りを提供しているの?
これが一番聞きたいし、1番大切なのですね。
ROEもEPSも配当額も、それはそれなりに意味があるのですが、結局は株主にどれだけ貢献しているのかなのです。

この会社が株主に提供している総利回りは、これだけと、しかも他社と比較可能な状態で出される訳ですね。
それが過去5年間を決算の度に明示する必要が出てきたのです。

米国では、取締役の報酬を決める重要な指標と書きましたよね。
そういう事なのです。結果を出せということ。結果とは、ROEでもEPSでもなく、株主に提供した利回りです。

さて、意識は変わるのか

伊藤レポートなどで、政府はROEの事実上の基準を示しました。
スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードも設定されました。
イギリスのISAをお手本に、NISAも作られました。

一連の施策で、自社株買いも増え、株主還元と言う言葉も、一般的にはなって来ました。しかし、まだまだ、お題目に過ぎません。

金融庁がTSRの有価証券報告書への記載を義務化したのは、これら一連の政策の延長であるのは、明らかです。
投資家の投資利回りを白日の下に晒すためでもなく、新しい投資銘柄選びの指標を提供するためでもないのは、自明の事でしょう。

しかしながら、過去の結果に過ぎないと言う事は留意しながらも、銘柄選びの参考になるのは確かでしょう。
参考にしながらも、企業の意識の変化の兆しがあるのかを見据えていくのも大切だと思います。

Excel計算表

TSRのExcel計算表https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/tsr.xlsx(金融庁提供)5年TSRが計算出来ます。
ネットでダウンロードしたExcelファイルは保護が掛かっている場合があります。編集可に変更してください。
水色のセルに数字を入れれば、自動計算してくれます。(指標は計算してみると表しているものが感覚的に分かります)

Excelをお持ちでない方は、無料の「LibreOffice」の「Calc」が使えると思います。