長期投資キャピタル・ゲインと言うのは、一定の期間に於ける価格の差、つまり、乖離を取って行くものです。
もちろん、投資として考えれば、配当などのインカムゲインもありますが、これも期間が関係します。

つまり、投資と言うものは、自分の持っている時間も投資しているようなものです。
あなたやあなたのお金の持っている時間、それによっても投資スタンスが違います。

投資の時間

株式投資では、株価のどの期間の波動の乖離を取っていくかで、短期投資、長期投資などと言う言い方があります。
さらに、期間から考えていくつか分類がされます。
スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、ポジショントレード、中期投資、長期投資などです。
もちろん、この辺りは、ある程度、曖昧な区分けです。

短期投資

スキャルピング

数秒、あるいは数分単位の取引を言います。数秒単位、数分単位で取引を繰り返す手法のことを言う場合もあります。ギャンブル的要素が強いものです。
普通の人ではあまりしませんが、コンピュータに行わせるアルゴリズム取引などで行われる事もあります。

デイトレード

文字通り一日で終了する取引です。日計り(ひばかり)あるいは日計り商いと言って、昔からされていました。
実際には次の日に持ち越す事もありますが、あくまで持ち越しはイレギュラーです。
これもギャンブル的要素が強いものですが、運動神経的要素もあります。

スイングトレード

数日から、数週間(数ヶ月)の波動の乖離を取っていきます。
日足で見た小刻みな周期(リズム)を取る感じです。
テクニカルサインや何かの発表の切っ掛け、あるいは下がりすぎや上がりすぎの反転を狙います。

このスイングトレードまでが短期投資の範疇だと言われます。
しかし、相場付きに依っては、数ヶ月間の相場を追い掛けていく事もありますので、ポジショントレードとの期間的な区切りは曖昧です。

中長期投資

ポジショントレード

数週間から、数ヶ月間のトレードを言います。
概ね株価の季節変動やトレンドを取っていくものです。
相場では、小回り三ヶ月、大回り三年と言いますが、この小回り三ヶ月の波動を取ることなどもポジショントレードです。
うねり取りは、このポジショントレードや前記のスイングトレードぐらいでしょうか。

私の感覚では、スイングトレードとポジショントレードの期間的な違いは、結果論に過ぎないと思っています。
ポジショントレードは、中期投資の区分けに入れる方が多いので、それに倣っていますが、私自身の感覚では三ヶ月程度が基本になる短期投資の範疇です。

長期投資

三年ぐらいと言われることもありますが、長期投資には、一定の期間はありません。
どこかで利確と言うことではなく、売る必要が無ければ、生涯、売らないと言うことも選択肢の一つになります。
企業が成長を続けている限りは、投資としても資産としても、保有を続けるべきだと思われます。また、配当や株主優待を得るための保有は、配当などを得たい間になります。

長期投資は、投資と言う言葉で語ることが相応しくないとも思っています。資産運用と言う言葉の方がぴったりとくるでしょう。
または、優良資産の保持、これが長期投資です。
優良資産とは富を生むものです。資産形成やポートフォリオ、そのものが長期投資です。

727億ドル以上(2015年時点)の資産を築いた稀代の投資家ウォーレン・バフェットも「最高のタイミングで買った株は一生売る必要がない」とも、「私たちは優れた経営を続けている企業の保有期間は、永遠が望ましいと思っている」とも言っています。

投資思想と売買タイミング

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大まかに投資、あるいは投機の期間による区分けを書きましたが、本来、それほど明確に分ける必要はありません。
デイトレードは取引の出来ない時間帯のリスクを勘案することもあって、一日で手仕舞いをしますが、その他の投資では、相場付きによって、期間はあってないようなものです。

明確な違いは、波動の乖離を取っていくのか、企業の成長の結果の対価を受け取るのかと言う事です。

株価の波動を見て、近未来の波動とのギャップを取っていくことが短期投資で、エントリーから手仕舞いまでを考えます。

これに反して、長期投資は、現在の会社価値と、会社の将来価値を見て、価値の成長を取って行き、資産、あるいは株式資産を増大させると言う事が主体になります。

短期投資はリスクがあると思えば、すべて手仕舞いしてしまいます。

長期投資では、一概に株などが下がるリスクだけでなく、上がってしまうリスク(相対的にポートフォリオのパフォーマンスが低下する)も考えますので、それに対応するようにポートフォリオを整えます。
この「持たざるリスク」と言うのは、実質的な資産の増減を考える長期投資の考え方です。

短期投資では、エントリーから手仕舞いまでを考えますので、ポートフォリオの概念はあまりありません。
持っていなければリスクはないと考えるので、持たざるリスクと言う観念はありません。

また、短期投資では、株式を取り巻く状況や株式の構成は見ることもありますが、企業内容は見ません。テクニカルや時事を見てトレードをします。

しかし、長期投資は、企業や事業内容こそが重要で、成長企業であると言う事が大前提です。
もしくは、確実性のある再建途上の企業です。

ですから、成長が止まったり、企業に対する判断が間違っていた場合などは、迷わず売却します。
(ただし、成長が止まった場合でも、成長の結果、最初に投じた金額に対して、配当利回りが非常に高い場合は、配当享受株として保有を続けます。成長の果実を生涯受け取ると言う事です。)

長期投資の有利性

短期投資が良いか、長期投資が良いかを論じるのは、実に愚かなことです。
その人の性格や向いている能力にも依りますし、その人の環境にも依ります。つまり、人それぞれと言う事です。
「黒い猫でも白い猫でも、ネズミを捕るのが良い猫だ」と言う言葉がありますが、要するに投資は、その人に相応しいやり方で利益が出ればよろしいのです。

私自身もデイトレードこそほとんど行いませんが、スイングトレードもポジショントレードも行います。もちろん長期投資も行います。

しかし、当サイトでお奨めしている長期投資には、有利な点がいくつもありますので、提示をしたいと思います。
長期投資は、成長株投資が大原則(長期の成長の果実を取ること)ですので、それを前提にお話しします。

  1. 長期投資は、プラスサムゲームです。
    しかし、短期投資は概ねゼロサムゲームになります。
    成長を続けている企業の株式は、総和がプラスになりますので、短期投資より、その点で有利になります。
    株式投資が他の投資に比べて持っている有利性を考えれば長期投資になります。会社に投資だけしていれば、後は会社が頑張ってくれます。
  2. 確度が高い。
    明日の株価は誰にも分かりませんが、長期的な成長はかなりの確度で予想が出来ます。
    成長株は、成長が続く限り株価は上がります。成長している企業の成長の前提が時代のメガトレンドである時、かなりの確度で企業の成長は持続します。
    成長が止まっても、その頃にはかなり成長を遂げていますし、株価は上がっています。
    長期投資は、株価のトレンドではなく、もっと大きく反転しにくい成長のトレンドや時代のトレンドに乗るということです。
  3. 手数料や税金を考慮に入れた資金効率が良い。
    頻繁に売買を繰り返しませんので、手数料はかなり節約が出来ます。
    また、短期投資では、毎回利確時に税金が掛かります。源泉徴収なしでも毎年税金分の資金が引かれます。
    長期投資では、最終的な利確時にだけ税金が引かれますので、その間、資金は最大限投資している状態(複利効果)に置けます。
  4. 配当や株主優待が得られる。
    配当を再投資に回し、ここでも複利効果を得ることが出来ます。
    特に成長企業に投資出来た場合は、配当額の増加が甚だしく、株価上昇は元より、年々金の卵を生み出す優良資産となります。
    また株主優待がある場合は、金銭に換算して相当な利回りを得ることが出来る場合が多いのです。
    株価上昇と、配当と、株主優待のトリプルパワーが長期投資です。
  5. 人生の効率が圧倒的に良い。
    毎日のように市場を見て売買をしなくても良いので、圧倒的に生活者としての効率が良くなります。人生の効率です。
    市場を見て短期に取引を繰り返すと言うのは、労働に勤しんでいることと同じです。計算すれば相当数の労働時間を使っています。
    また、短期投資では、神経もすり減らします。実際に利益が出ていても、実質的な損得は不明です。
    サラリーマンの方々などでは、例え短期投資で儲かっていても、業務がおろそかになり、出世の芽を摘んでいるのかも知れません。
    長期投資は、休みの日などにたまに検討は行いますが、普段は遊んでいても利益が出ます。
  6. 個人投資家の武器が使えます。
    短期投資の世界は、ほぼ誰かの損が誰かの得になる分捕り合戦です。
    この短期投資で有利なのは、圧倒的な資金力や取引スピードが勝る機材や情報収集力に長けたルートや人材が豊富な機関投資家です。
    個人投資家は、短期投資では圧倒的に不利な立場に置かれます。
    しかし、個人投資家は資金こそ少ないのですが、期間内に利益を出さなければならない機関投資家に比べ、自由で豊富な時間を持っています。
    この時間の力は個人投資家に有利に働きます。
  7. 損失があまりない。
    成長株は、成長が続く限り株価は上がりますので、一時的に含み損になっても、必ず株価は上がっていきます。
    見込み違いの撤退はあっても、いわゆる損切りに至ることはありません。そもそも機械的な損切りをしていては、長期投資は出来ません。
    見込み違いの撤退で損失を出すことも、投資した初期に株価が下がり、さらに、考えていた成長ストーリーが間違いだったと言う、不運が重なったときだけになります。
    充分な検討をすれば、この不運が重なると言うことは、あまり無いはずです。
  8. リスクリワード比率が高い。
    株式投資では、7勝3敗でも損をすることがあります。また、3勝7敗でも儲かることがあります。
    利益のためには、リスクリワード比率(RR比率)を高くすることが大切です。
    RR比率 = 平均利益 ÷ 平均損失。
    つまり投資では、勝率ではなく、失敗した投資の損失幅より、成功した投資の利益幅を大きく伸ばすことが大切です。
    成長株の長期投資では、何倍もの株価を狙いますし、実際に成功すれば、何倍、十数倍にもなりますので、RR比率が高くなり、利益を得る可能性が高くなります。
    例えば、3銘柄に均等に投資をして、2銘柄は半値で撤退し、1銘柄が3倍になったとしても、充分な利益になります。
    (この例では、100万円ずつ、300万投資をしていたとして、400万円になります。)
    長期投資は、まずRR比率が高くなりますので、勝率が低くても利益になる可能性が高いのです。

いかがでしょうか。
よく短期投資や長期投資のメリット、デメリットを書いてある書籍やサイトなどがありますが、表面的なことしか書いてありません。
ここまで詳しく書いているのは、当サイトぐらいでしょうか。

また、短期投資のほうが資金効率が良いと、勘違いをされている方がよく居ますが、そういうことはありません。
これは100万円を6回投資したら、600万円を投資できていることと同じという信用膨張の考え方に近い理由に因ります。
しかし、短期投資で資金効率を良くしようとしたら、損切りに至ることも多くなります。資金効率も良いが、資金損失率も多いのです。

例えば、10万円の損切りがあったとして、その10万円を取り戻す過程は、全く無駄な投資になりますので、計算されれば、資金効率が良いとは言えないことが分かると思います。

既に提示していますが、毎回の利確時に税金を差し引かれる場合と、長期に投資して最後に一回税金を差し引かれる場合を計算して見れば、長期投資の有利性は、自ずと明らかです。

しかしながら、なぜ短期投資を推奨するような論点が語られやすいのかと言えば、短期に取引を繰り返して貰う事が自分の利益になる人たちが非常に多いからです。
手数料商売の証券会社もそうですし、投資顧問も短期投資でなければ、会費や顧問料などを取り続けることが出来ません。
アナリストや評論家も次々にレポートなどを売り続けることが出来ません。
また、ファンドなど、毎年、短期的に利益を出すことを強要されている機関投資家もあります。

ですから、そう言う組織に連なる方々や真に受けた方々は、短期投資を薦めてくるのです。
そういう紐付きではない方々は、あっさりと長期投資を薦めます。実に単純な構造です。

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