利確しない威力含み益は幻と言う事を言われる方がいます。利確(利益確定)して実現してこそ、利益と言う訳です。
また、含み益は幻、含み損は現実とも言います。一見、慎重な言い回しですが、自己矛盾になっている言葉です。
含み益が幻であるのならば、含み損も幻です。

また、根底に売らなければ利益にならないと思っている、資産と言う概念がない稚拙な意見でもあります。

この事について語ります。

すべてあるがまま

含み益は、エントリーして、値上がり益があり、売却していない間の、受け取っていない利益を言います。
含み損は反対に、購入金額より価格が下がり、評価した場合の損失状態、又はその額を言います。
もちろん、キャピタルゲインで使う言葉です。(インカムゲインで、配当などが徐々に含み益になっていて、権利落ちで含みを吐き出した、と言うような言い方はしません。)

この含み益や含み損はエントリーして、手仕舞いを想定した概念です。
1回のエントリー、もしくは1銘柄のエントリーでの利益想定、損失想定に対して言っています。

これはエントリーごとに収支を考える、短期投資、あるいは中期投資の概念とも言えます。
含み益も含み損も、現金化を前提にしている言葉です。つまり、通貨に換算して、のちに現金化した時の状態を、現金化の前に表現しているものです。

短期投資と中期投資の違いは、期間の違いで、哲学の違いではありません。
しかし、長期投資には、短期投資や中期投資とは、大きな投資哲学上の違いがあります。
それは株価の波動を見るか、会社の成長を見るかと言ったことだけではなく、スタンスの違いです。

長期投資と言うものは、ポートフォリオ、あるいは資産、そのものに他なりません。
売却も購入も、ポートフォリオの組み替えということです。

現金化も通貨に投資対象を移す、ポートフォリオの編成替えに過ぎませんし、常に現金化を前提にしているわけではありません。

ある株式の購入値段が1単位日本円で50万円であり、現在100万円になっていたとしても、50万円が含み益として算出されません。
長期投資では、それはポートフォリオ上の現実の通貨100万円換算の資産であるからです。

実際に今現在、同じ物を購入しようとしたら、円通貨100万円が必要なのです。これは紛れもない事実です。
そして、また、ポートフォリオを組み直して、その銘柄の資金を他の銘柄に移すことに対しても、100万円の価値があります。
そこには含み益も含み損もありません。

つまり、含み益も含み損も、あなたの心の中だけにある、文字通りの幻なのです。

では、長期投資は利益を出すことを考えないのかと言うと、もちろん、そんなことはありません。
ただし、短期投資のように1エントリーごとに含み益や利益を考えたり、注目したりはしません。

ポートフォリオの全体の拡大、資産の拡大こそが長期投資の目的です。
全体を通して資産を拡大させること、その資産には含みも何も、実際のあるがままがあなたの資産です。そして、資産とは富を生むものを言います。
短期投資に於いては、1エントリーごとに考えるので含みがありますが、長期投資に於いては、常にポートフォリオの評価替えをして行きますので、含みはありません。そもそも、このポートフォリオの含み益、あるいは資産の含み益と言う表現は存在しません。

ポートフォリオの組み替えに於いては、成長性の乏しい物、あるいは成長性が崩れたものから、成長性のより高いものへ資産を移します。
また、株価の上昇などに伴ってバランスが悪くなったものを、リバランスしますが、これは含み益を出す、損切りをすると言う、手仕舞いではありません。
もちろん、いったん現金化して行う事ですので、事実上、そうなのかも知れませんが、実際に長期投資を主にしていると、あまり意識はしないものです。
求めるものも、確認するものも、資産の増大だけなのです。

長期投資と利確

インターネット時代になり、益々短期的に売買をする人が増えています。
また、短期売買を繰り返して貰う事が利益になる人々によって、短期投資偏重の考え方が伝播されています。
そして、それがまるで相場の常識のように語られます。

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株式で儲かっている人は全体の5%、あるいは非常に少ないと言うことが言われたりします。
根拠があるのかどうかは分かりませんが、非常に少ないのであれば、それは常識が間違っているのです。

そして、その常識にとらわれてる人々の内では、確かに儲かっている人が実際に少ないのでしょう。

常識の1つに利益確定(利確)が大切と言う言い方があります。果たして本当にそうでしょうか。

ここでは長期投資の立場で語っていますが、もちろん、長期投資は現金化しないと言う事ではありません。基本的には長期投資で通貨に移すのはポートフォリオ上、通貨に投資している状態になります。
また、現在のリスクとリターンを考えて、通貨に移すこともありますし、自分で使う必要があっても現金化をします。
そもそも、他の銘柄に移すには、一度現金化をします。

しかしながら、利益が出ているので、利確すると言う考え方は、長期投資にはありません。
利益が出ていようと、損失が出ていようと、成長株の長期投資では、会社が成長している限り、保有が原則です。
それでなければ、何倍にも何十倍にも利益を伸ばすことは出来ません。
そもそもリスクリワード比率(RR比率 = 平均利益 ÷ 平均損失)を高くするには、性急に利確をして、手仕舞いをしないことが大切なのです。

つまり、利益が出ているから、あるいは損失しているからと言うのは、売買の理由にはなりません。
先にも述べたように、長期投資では、ポートフォリオの組み直しなどが、売買の動機になります。

利確が大事、利確してなんぼのもの、などと言う方が見えますが、短期投資などであれば、そうなのかも知れません。
しかし、成長株の長期投資では、利確が前提ではありません。
売る必要が無ければ、一生売らないと言うことも選択肢になります。

もしかして、人によっては、とんでもない話に聞こえるのかも知れませんが、同様なことは、世界の著名な長期投資家の多くが語っています。
もし、そのように感じるのでしたら、あなたは何かに洗脳されて、利確しなければ利益にならないと思い込んでいるのかも知れません。
そう言う方は、利確や損切りを何度も繰り返して、大きな資産を築けているのかを点検して見て下さい。

株式資産の威力

複利の威力

成長企業に長期で投資すると言う事は、税金などが差し引かれず、値上がり益も含めて全額が再投資出来ていると言う事で、大きな複利効果があります。

一例として「バフェット投資の真髄」と言う書籍に、長期投資の複利効果について書かれている例を紹介します。
条件をそろえ、年間2倍になる投資を1ドルで始めたと、仮定します。
毎年、年末に一旦売却して税金を払い、残りを再投資した場合は、20年間での純利益25,200ドルです。
しかし、長期間利確せずに保有し、20年後に売却し税金を払った場合は、純利益692,000ドルになります。

つまり、差額は、666,800ドル(1ドル110円換算で、約7,335万円)分で、27倍差以上になり、圧倒的に長期投資のほうが収益が多いのです。
この米国税制の例でなくとも、どのようなモデルケースを計算しても、また日本でも、ほぼ同様の傾向になります。

この差額を上回ることは、神業のように株価の動きに追従する必要があり、かなり難しいと言えます。
この事は多くの長期投資家が指摘していて、又、株式投資の理論研究でも、長期投資が効率的なのは明確になっていることなのです。

株式で儲かっている人は全体の5%などという話は、長期投資を行っている投資家にはあり得ません。大なり小なりの違いはあると思いますが、成長している各会社のチャートを見れば、ほとんどの方が儲かっていることを確認出来るのではないでしょうか。

200年間の株式の長期リターンは約60万倍

以下の図は、インフレ調整後のトータルリターン(キャピタルゲイン・配当・利息を含む)の推移を累積ベースで示したものです。

長期投資比較
出典:ジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」195頁

200年間の調査をしています。この間、株式は60万倍に成っています。
10万円を株式市場に投資していたとして、トータルリターンは600億円になります。

最も有利なのは株式で、他の資産とは、驚くほどの差が付いています。
特に購買力で示した通貨(ドル)の凋落ぶりは印象的ですらあります。お金を失いたかったら、お金で持つことです。
資産と言うものは、株式を中心に長期で持たれることが、資産形成には相応しいと言うことが、お分かりになるものかと思います。

株式市場の暴落は何度もありましたが、トータルリターンは、力強い上昇を続けています。
大きな例を挙げますと、1929年に始まった歴史的なウォール街の大暴落では、1932年時点でダウは89%下落しています。この大暴落では20年~25年間ほど、株価は立ち直ることはありませんでした。
しかし、総合収益を考慮するトータルリターンでは、多少我慢する程度で立ち直っています。長期投資家に取って、暴落は怖い物ではないのです。
著名な長期投資家のほとんどが、損切りは必要ないと主張している、その意味も納得できるでしょう。

短期投資家(投機家)と長期投資家の見ている景色は明らかに違います。長期投資は株価の値幅の単純な引き算や足し算ではないのです。

売却した場合に失う手数料や税金分を内部に留める複利効果、さらに配当等の収益化もトータルリターンに含まれ、この累積は加速度的に拡大して行きます。
また、株主優待はトータルリターンの計算には含めませんが、実際には果実の1つです。貸株金利も同じです。
株価が相当な下落をして、損失を抱えているように見えても、長期投資家のトータルリターンでは、遙かに高い収益を確保していると言う事も、普通にあることなのです。

大きな暴落があっても、長期的な視点で見れば、あまり差し障りが無いということが分かりますでしょうか。
これは米国の例ですが、日本でも同じ傾向になります。戦前から投資していたとして、おおよそを勘案して見てください。

担保としても

株式資産は、必要時には現金化もしますが、会社の成長性に問題が無ければ、ひたすら持っているだけか、と思われるかも知れません。
もちろん、それなりにポートフォリオの組み替えはあります。

しかし、そればかりではなく、成長株を担保にして、信用取引を使い、短期投資をして、稼ぐことも出来ます。
成長株の株価上昇や利確しない複利効果で、信用枠は増大し続けますので、時間と共に有利な取引が可能です。

担保にした成長株の価格は上昇し続け、枠の拡大による信用取引の利益拡大、そして、更なる枠の拡大が高速回転し、ある時を境に資産は急拡大をします。
その都度、利確や損切りをして手仕舞いしていては、とても得られない加速装置です。

もちろん、信用取引はすべての人にお奨め出来る物ではありません。
信用取引に不慣れな方や短期投資に不慣れな方は、決して手を出すべきではありません。

しかし、検討して見たい方のために、私の場合をお伝えします。(現在、行っていません。)
もちろん、単なる1例に過ぎませんし、推奨するものではありません。

私は信用取引口座を短期専用にして、その他の口座とは区別しています。
この信用取引を行う短期用口座で購入する担保用の現物の株式、これは短期投資用ではありません。
長く持つ成長株の内、下値不安の乏しいと思われた株式を購入して、担保としております。
その中でも、なるべく出来高が多く、売却しやすいものが中心です。
これは株式担保は現金に比べて80%の担保価値ですので、保証金維持率が緊迫したような、いざと言う時は、売却して現金化するためです。もちろん、それ以外にある程度の現金は入れて置きます。

この信用取引では、主にうねり取りをいたしています。これは私の場合であって、あくまで人によりけりと言う事です。
うねり取りと言うのは、銘柄固定、継続売買のことです。
昔から(江戸時代の米相場のころから)されている技法の1つで、主にプロが生活のために行ってきました。

うねり取りは、なるべく取引が盛んな大型株で、空売りも出来るものでします。
株価の上下波動が分かり易く、概ね定期的なもの、あるいは自分に取って動きが予測しやすい株式を対象にします。自分に合った波動の銘柄を見つけると言う事になります。
動きが大きければ、なお良いと思いますが、気にしなくても良いでしょう。
また、もし失敗しても、待てば信用期日の間にエントリーの位置に戻ってくる可能性が高い、往来相場の銘柄がよろしいです。

相場は、小回り三ヶ月、大回り三年、あるいは小回り三ヶ月、大回り六ヶ月と言いますが、この三ヶ月ぐらいの波動を主に取っていきます。
トレンドが三ヶ月で変化する保証はありませんが、テクニカル指標も参照しながら、概ね三ヶ月のうねりに乗ります。三ヶ月近辺で反転しない場合は、半年の波動であることが多いようです。自信があれば、もっと小さな波動、リズムを取って行ってもよろしいです。
上昇波は買い建てをして、下降波は売り建てを行い、上げでも下げでも、利益を積み重ねます。トレンドが明確になった場合は、追加します。
空売りになじめない方は、上げ波動だけ取って、下げ波動の時は休んでもよろしいです。

長期投資の効率の項で、毎日市場を見て取引をしなくても良いので、人生の効率が圧倒的に良いと述べましたが、短期投資も行ったら意味がないと思われるかも知れません。
しかし、このうねり取りは一日に一回、トレンドの反転が起きそうかだけを確認するだけでよろしいのです。
場が終わったあと、もしくは、後場の引け辺りで確認することで、トレードが可能です。
短期投資を行っている方から見ると、何ともはや、退屈な取引でしょうか。

うねり取りの肝は、銘柄の選定と、慣れです。書籍の紹介をして於きますので、一読は必要でしょう。
古い本ですので、手書きのグラフを書く話が出てきますが、もちろん、パソコンチャートでもよろしいですよ。

うねり取りは簡単すぎて教科書がなかったと、うねり取り入門にも書いてありますが、やり方そのものは、難しくありません。
ただし、もし、今まで色々な手法で短期投資をされて来た方でしたら、今までの常識を棄てることが難しいのかも知れません。損切りなども何%で機械的にするのではなく、概ね波動に違和感を持ったときにします。もしくは、いったんつなぎを使って、方向性を見定めてもよろしいです。

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もしも実際の建玉の操作について、プロのうねり取りの売買記録を研究したい場合は、以下も参考になるかもしれません。
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また、買い建てから売り建てへの変化などの研究は、以下も参考になります。
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うねり取り入門は、必ず最初に読み、概ね意味している事を理解してください。
もっと実務的な例を知りたい方には、私の参考の仕方とは違いますが、移動平均とローソク足を使い、うねり取りをしている方の具体的な説明の本も紹介して置きます。
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