オリックスと長期投資と暴落相場について

新型コロナで株式市場は暴落しました。
この間、当サイトのフォーラムでは、何度も理由などと共にお伝えしていましたが、私自身はオリックスの買い増しをしていました。この事について、なぜなのかなどを、まだ充分に株式市場が安い内に、記事でもまとめて置きます。

また、厖大な永遠の利益の生み方にも言及しています。

オリックスと暴落相場

オリックスは、リーマンショックの当時、95%以上の暴落をしています。株価が20分の1にまでになりましたので、尋常ではありません。
この時に売り越したのは、当時63%以上を持っていた外資です。半分程度が売られ、構成比が34%まで下がりましたので、そのすさまじさが分かるかと思います。

オリックスはニューヨーク市場にも上場していますが、市場では組織的で悪質なデマが蔓延することがあります。
もちろん、結果的にデマであったと見なされるだけで、全く根拠のないことではなかったと言う事もあり得ますが、売り仕掛けなどでどこかが仕掛ける事も普通にあることだと思われます。
リーマンショック当時、倒産デマ、あるいは倒産説が流れていました。名だたる外国機関投資家の持株の半分が売られたと言う事ですので、かなり強力で悪質な仕掛けだった(かもしれない)と言う事が分かります。

もちろん、オリックスはリーマンショック当時、多くの企業が赤字であったのに関わらず、倒産どころか、黒字で着地しています。結果的にはほとんど根拠がない噂、あるいは策謀だったのです。
しかし、当時のトラウマで、オリックスはショックのある時に売られ易いという感じになっている、あるいは言われるようです(やがて、この特徴は事件の風化と共に無くなって行くものと思われます)。
オリックス自身は、リーマンショックと同じような事が起こったときに、むしろチャンスとして利益を増やせる体制を整えたと、アナウンスしています。

しかしながら、売られ易いこと、これ自体が仕込みのチャンスです。

不況とオリックスの黒字体質

オリックスは創業以来、初年度を除き、55年間も黒字を続けています。非常に強力な黒字体質の企業です。

理由の1つは、日本有数のリース業分野を持っていると言う事があります。リースというのは、概ね不況の時に活況になる業界です。
業績が芳しくない、あるいは不透明な時には、各企業は手元流動性を高め、調達はリースに任せるという行動に出がちです。

もちろん、直近はリース料の支払い猶予の要請も顧客から出てきますので、一時的に業績が落ち込むことがありますが、もちろん、当然に猶予であって、免除ではありません。
そして、新たにリース機材を増やす所も出てきますので、プラスに働きやすい状況になりやすいのです。
オリックスは、新型コロナで苦境になった航空機リース部門を持っているので、特に危ういというようなことを言われることがありますが、直近はともかく、これも全く逆な訳です。
例え、航空会社などが破綻しても、航空機等の名義はオリックスであって、すべてが減損になる訳ではありません。

これらの特徴は、直近はともかく、新型コロナが終わった後の長く続くかも知れない不況期に特に顕著になってくるものと思われます。

また、オリックスは多角的な事業を営んでいます。
ですから、色々な事業が補完関係にあります。
例えば新型コロナでホテル事業は深刻な赤字になるでしょうが、多くの他の事業では軽微です。これらも強い黒字体質の原因の1つです。
空港の運営事業も営んでいますが、こちらは配当の支払いを受ける立場であり、配当享受がなくなることがあっても赤字を被ることはありません。

不況と飛躍

オリックスは、不況の度に大きく飛躍してきた企業です。オイルショックもリーマンショックも東北の震災も同じです。

多角的な事業を営んでいますが、それは固定したものではなく、時代に寄って少しずつ拡大し、変化する物です。
不況時には新たな収益を求めて新事業に打って出ています。

常に社内には色々なビジネスモデルが検討され、用意されているようです。
例えば太陽光発電も、検討され準備されていましたが、収益性がもう一つ確保出来ないと言う事で、凍結されていました。
震災後、計画停電が行われたこともあり、政府の買取制度が始まると、準備していたビジネスモデルが一気に花開きます。
今では日本最大の太陽光発電事業者です。もちろん、地熱発電、バイオ発電など、試行錯誤をしています。こちらもトップを走りそうです。

オリックスは前年度も1兆5千億円の投資を行っています。
おそらくコロナ後にコロナ後を睨んだビジネスモデルの投資がされるものと思われます。

また、単一な事業の会社では、賞味期間があります。どうように優れたビジネスでもやがては衰退します。
オリックスのような変化出来る会社は、ダーウィンがいみじくも語ったように、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」と言う言葉に足り得ます。

安定的な財務

自己資本比率22.9%をやや少ないと心配される方も見えますが、リース等のファイナンスも行っている会社としては安定した財務体質と言えます(三菱UFJリースで、13.1%)。
またこれは、有利子負債の4.5兆円のうち、傘下のオリックス銀行の預金2.2兆円ほどが負債としてカウントされた結果ですので、心配するような事は何もありません(受け入れた預金は有利子負債と見なされます)。

直近でも、流動比率(流動資産÷流動負債)も約292%。長期借入比率は93%であり、手元流動性カバー率も536%ほどありますので、充分な余裕があります。

長期投資対象としてのオリックス

このように投資対象として非常に魅力的な側面があります。
日本でも20番目ぐらいの純利益をたたき出す押しも押されぬ優良企業です。しかし、何をしている会社か分かりにくい、実情が知られてないことなどがあり、いつも株価の評価がやや低いようです。

当サイトでは、オリックスは配当再投資に寄る長期投資をお奨めしていますが、株価が安い、つまり、配当がよいと言うことは、配当再投資による投資により向くと言う事です。

富を生むものが資産です。資産を多く所有することが富を多く得る事でもあります。
株式を売るという行為は、資産的な価値があるものから、資産的な価値がないものへ、チェンジしてしまう行為とも言えます。

暴落と長期投資の収益

暴落時の買いが最強

オリックスは他の株式と同様、あるいはそれ以上に安くなっていました。

下値で手に入れられた方は、値上がり益も手に入れることが出来ます。
しかし、特に配当の多いオリックスの場合、単に値幅が取れたので売ると言う行為は、大いなる愚作です。
下値で手に入れられた方は、大きな資産(金の卵を産むガチョウ、金のなる木)を手に入れることが出来ます。

配当再投資による資産化は、暴落時にこそ真価を発揮します。また、単純な買い増しも大きな威力になります。

では、買っていた銘柄が暴落した場合はどうでしょう。

暴落前に買って、株価が回復しなくても

長期投資においては、買っていた銘柄が暴落して、株価が回復しなくても、心配はありません。

株価下落から回復までの年数

表はジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」より

少し見にくいですが、この表は、配当再投資において、買っていた銘柄が下落して回復しない場合でも、元の水準の収益に戻る年数を示しています(通常は回復しますので、もっと早く収益が戻りますし、単純に追加資金での買い増しも有効です)。

配当再投資の場合、配当利回りが高いほど、また、下落率が多いほど、回復に掛かる年数が少なくなります。
株式投資は小学生の算数ではないと、常々言っていますが、下落率が高いほど早く回復するというのは、足し算引き算の値幅取りしか知らない小学生脳の方には理解しにくいかも知れませんね(笑)。
もちろん、配当再投資による保有株の積み増しが加速するからです。

株価が回復しなくても、収益を回復させた後には

株価回復後のリターン

この表は、株価が回復しない場合においても、配当再投資に寄って収益が回復した後で、株価が回復したと想定した場合の利回りを示します。
当サイトは何度も長期投資は単純な値幅ではないと言ってきました。プロの長期投資家は、これらを見るのです。

下落率が多いほど、回復に掛かる年数が少なく、回復した後での利回りが高くなります。
これがトータルリターンの理であり、極意です。

これに株価の回復、あるいは会社の成長がプラスされた場合の複利効果、トータルリターンを考えて見て下さい。もちろん、通常、会社は成長し、配当も増えますし、そういう会社を選ぶことは可能です。
啓蒙のために、もう一度、言ってしまいますが、足し算引き算の値幅取りしか分からない小学生脳の方は、早めに目覚めることをお奨めします。

永遠に続く厖大な利益

株価が回復しない場合でもこうなると言う、計算結果を示しました。
そして、やがて株価が回復したり、株価が成長したりした場合、あるいは配当増額があった場合、どれほどのリターンが返ってくるかの勘案は、条件が様々なので、各自にお任せします。しかし、より良いことは言うまでもありません。

株式は売ってしまえば、利益の20%以上も税金を取られ、資産化も出来ません。

税金分を内在化させた複利効果。配当再投資に寄る複利効果。複利×複利。つまり、益利回りの複利化の雪だるま方式が長期投資の肝です。

数年ではあまり目に見えないかも知れません。しかし、10年、20年、30年では、莫大な利益を私たちにもたらします。
もちろん、始めの投下資金に対して非常に高い利回りが確保出来たころ、配当再投資を停止し、配当を享受します。

私も値幅取りはしますが、売り買いして値幅を取っているだけの方は、一生同じ事をし続けて、休まることもないと思われます。
投資とは小学校の算数ではないと、早めに理解されることをお奨めします。

今回、より高い利益を求めて急落したオリックスを以上の理由で買い増ししましたが、ついでにバイ・アンド・ホールドの長期投資の世界での基本も改めてお話ししました。

もちろん、これらは、他の株式でも、どのタイミングの買いでも概ね同じです。しかし、暴落時にこそ、より真価を発揮します。
バフェットが「最高のタイミングで手に入れた株は一生売る必要が無い」と言うような意味の事を言っていますが、おそらくこの事を言っているはずです。