来たるべき世界

世界は新型コロナウイルスによって、様々な色模様を成しています。
もちろん、ウイルス自体は、明日か、数年後かは不明ですが、やがては終息を迎える歴史の1ページに過ぎません。
しかし、世界に及ぼした影響が今後の世界の道筋を作って行きます。

※本稿は現在進行形の事柄の影響に関する事を語っていますので、ほんの僅かな変化で大幅に道筋が変わります。
そもそも新型コロナすら終わっていませんので、すべて、日々修正される現時点での展望に過ぎない事に留意してください。

カレント

まずは、コロナ後の世界は、コロナで変貌した現在の世界がそのまま続く面があると言う事が言えます。

生活習慣の変貌

身近な例で言えば、マスクをするという事は、欧米を始めとして、奇異な人として見られる国が多くありました。
つまりマスクをしている人は、重篤な病にかかっていると見なされていました。
しかし、これも日本などと同じように予防で付けることが普通の事になっていくでしょう。

また、握手の習慣も消えつつありますが、抱擁なども無くなって行くことが考えられます。
現在、欧米では「フットタップ」、「ストップ・ドロップ&ノッド」、「グラスプ&グリート」に置き換わったり、「エアキス」が行われたりしているようですが、普通におじぎに終息していくのかも知れません。
※各方法の詳細については、ここでの話題ではないので、ご自分でお調べ下さい。

この他、様々な習慣が微妙に変わっていくことになるでしょう。

IT社会の浸透

テレワーク(自宅勤務・リモートワーク)が推奨されていますが、いったん推進されたテレワークにシフトした勤務体系は、コロナ後にすべてが元に戻るわけではありません。
むしろ、労務管理の問題などで踏み込めなかった会社が、テレワークで試行錯誤が出来たわけです。

労務管理の問題がクリア出来ればテレワークは、かなりのコストカットになります。通勤手当は掛かりませんし、オフィス光熱費の節約、さらにオフィスそのものが縮小出来ます。
今では通信費は問題にもならないほどの経費ですし、標準でビデオ会議などが可能な充分な帯域速度が提供されています。また、回線増設は可能です。使わない手はないのです。

労務管理は成果主義になっていくでしょうし、外回り社員に多く利用されていたワーキング管理のMDM・EMMの導入が進むことに(なるだけのことに)なります。
そして、ある程度の人々がテレワークに移行すれば、コロナで疲弊した鉄道会社も利用者が減る通勤定期の割引率を見直す事になります。それらのことにより、通勤コストが増しますので、さらにテレワークに移行される人々が増えるでしょう。
この事は様々な変化をもたらします。
オフィス街の飲食店などの店舗街は縮小するでしょうし、身近な例ではハンコ文化の終了があります。政府も通信手続きに移行するために行政手続きでの捺印の廃止をすることを決めています。

もちろん、学習塾や大学でもインターネット利用が増えるでしょうし、オンライン診療や通信作業支援なども飛躍的に伸びる事と思われます。ライブやスポーツ鑑賞もネット中継が徐々に増えてくるでしょう。
これらは、5Gなどの移行を推進し、当サイトで注目銘柄にしているオプティムなどのIT企業の繁栄ももたらすものと思われます。

また、コロナの買い占め騒動などでネットショップの利用の体験をしたお年寄りも増えたそうです。
聞くところによると、数々の失敗もあったようですが、新たに体験した人々の需要としてはある程度は定着していくでしょう。

銀行でもキャンペーンを行って、ネットバンキングを推奨しています。
また、ネット証券の口座開設がかなり増えたようです。
これは相場が急落して底値を買いたいという新規の方だけでなく、残っていた対面営業証券主体の年配のお客さんがネットショップ利用などでネットを体験して、シフトをしている部分もあるのではないかと思っています。

既に進んでいたことですが、通信へのシフト、これらが加速し、顕著になって来ると言う事が言えます。

生き残り組への集中

店舗などでは休業要請で閉店、時短営業が大部分になっています。
これが続けば飲食業、観光業、レジャー産業を中心に倒産件数も多大なものとなると思われます。
特に借金まみれで本来なら退場していてしかるべき温存された企業が、いよいよ終末を迎えようとしています。
もちろん、潤沢な資金がある上場企業でも飲食業、観光業、運輸業などを中心に、非常に切迫しています。また、場合によっては、業種そのものが消滅することもあるでしょう。

このタイミングで個人営業の店舗では、廃業も増えています。
後継者もいないし、赤字を出すぐらいなら、この際ということなのでしょうか。

基本的には、すべての業種で前代未聞の危機が起こっていますし、失業者の大量排出も懸念されます。多くの倒産、あるいは廃業があるものと思われます。
当然に、現在進行形の事象ですので、どこまで切実になるかはわかりません。
意外に大したことではないのかも知れませんし、場合に寄っては、戦時下とも、世界恐慌下とも言える状況になるかも知れません。

しかし、需要の根源がなくなっているわけではありません。無差別に工場が破壊されたわけでもありません。
除かれるのは、まずは耐えられなかった倒産予備軍企業です。
新型コロナ対策での持続化給付金(個人100万円、中小企業200万円)は、ほぼ破産に必要な費用の給付と考えると、この金額の意味がわかります。

Amazonが成長し、多くのスーパーマーケットを破綻させました。
しかし、ウォルマートなどは活況を呈します。単純に言えば、Amazonがライバルを駆逐してくれたおかげです。

同じようなことは起こりえます。新型コロナがライバルを一瞬に駆逐してくれたというわけです。
従来から団体客をターゲットにしていたり、旅行会社の集客に頼って来た老舗旅館の倒産が増えているようです。新しいモデルを打ち立てられなかった所に引導がもたらされたものです。
もし需要が戻ればニーズを取り入れてきたところが繁栄します。

昨今、需要は低迷し、生産設備、あるいは供給は過剰で、デフレ状態が深刻でした。
そこで、新型コロナによって一気に需要は激減し、供給を担う企業が倒産します。明らかに供給余力は激減します。

そして、、、新型コロナが解決し、需要が戻る条件が整います。
すでに先行して行われていますが、このタイミングで、前代未聞の経済対策が行われます。

天国と地獄です。
生き残り組は、屍の上で天国を見ます。

失業者は業界の生き残り組や新産業に収拾されますが、従来と同じ待遇とはならないでしょう。非正規雇用にならざるを得ないのでは、と思われます。
ここでのキーワードの1つは、二極化です。

未曾有の世界へ

新型コロナで世界恐慌が起こるという意見が蔓延しています。
もちろん、その可能性はあります。
世界恐慌の果てに世界大戦が起こると言う可能性すらあります。
1929年のウォール街の大暴落を機に世界恐慌が起こりました。そして、第二次世界大戦に進んで行きましたが、その過程をなぞるわけです。

もちろん、分かりませんが、私は、ないだろうと判断しています。
当時の恐慌は、過剰供給、過剰投資が原因でした。
株価の暴落があって恐慌になったわけではなく、バブル状態が破綻しつつあったので、先行きの行き詰まりで株価は暴落したのです。

大恐慌時には金融緩和も銀行救済もありませんでした。アメリカでは4500行以上の銀行が倒産し、預金は消滅しました。約25%の失業者が溢れ、それに伴い、自殺者が増大し、世の中に犯罪が蔓延しました。
しかし、もしかしたらバブルの終焉で終わったものを、すべてとは言いませんが、マネーサプライを増大させず、むしろ縮小させてしまった人災の面もありました。
当時、金本位制であったのも、金の流出を恐れて金利も下げられず、通貨供給量も増大させ難かった面もありました。また、多くの国では金準備の不足で行動が制約されていました。

その後、ニューディール政策などもありましたが、結局は戦争での戦争特需と、世界の余剰供給力が破壊されて、経済成長を取り戻し、正常に戻りました。

私の理解とは多少の齟齬があったとしても、この事は確定とまでは行かなくとも、概ね推定されています。
ですから、同じような愚かしい轍は踏まないでしょう。また、当時は無かった預金者保護もあります。

それがよく分かるのが、今、世界中で行っている超金融緩和です。マネーサプライの増大です。
日本銀行も国債の購入制限を無くし、社債の買い入れも20兆円と積極化していますし、ETFの買い入れも増加しています。
FRBも金利低下、金融緩和など様々な対策、ジャンク債の購入まで踏み切っています。

アメリカでは給料保護プログラムを始め、2兆ドル(220兆円)の経済対策を決定しましたし、日本でも117兆円(真水では48兆円)の経済対策が決まっています。
しかし、これは新型コロナの対策であって、その後の経済対策では、まだまだ投入することになるでしょう。

ちなみに日本では全員に10万円を配ることが多少の紆余曲折はありましたが、一気に決まりましたね。
リーマンショックの時には1万2千円を配るのに様々な議論がありましたが、それに比べると、やはり行動が大胆です。
アメリカでも大人に1200ドル(約13万円)、子供には500ドルで、ドイツでは5000ユーロ(60万円)を配布しました。
その他、イタリアが30万円など、各国の金額の多寡はありますが、同様な政策を世界中で行っています。

まだ不十分という意見もありますが、前代未聞の規模です。特に前回の恐慌の発生地のアメリカで顕著であり、世界を先導しています。
もちろん、赤字国債を使って行うわけですが、これらにも反対らしい反対はありません。マネタリーバランス論などは表向きは吹っ飛んでしまいました。

新型コロナ対策は、錦の御旗になっています。つまり、なんでもありです。しかし、そうする必要があります。
そうでなければ、大恐慌時の4人に1人、国によっては3人に1人にも及ぶ失業者の群れ、今日も誰かがビルから飛び降りる日常の風景、どこにいても犯罪に怯える日々が出現します。そして、戦争です。

もちろん、それを防ぐためにしなければならないことは、今ではほぼ分かっているのです。
ですから、被害は大きく、様々な破綻があって危ないところまで進みますが、最悪の世界恐慌までは行かないと判断しています。

やがて立ち上がる市場

世界中で異次元の超金融緩和が行われ、通貨は供給されます。
それによって、最終的な破綻は、ようやく回避されます。

しかし、これはやがては新たな未曾有の危機をもたらします。通貨の揺らぎ、つまり、流通通貨の厖大な胎化、通貨価値の下落です。

これら市井に滞留する通貨は、やがてインフレをもたらしますが、その前に投資資金へ向かいます。
おそらく現在から混乱するであろうしばらくの間を、もっと大きな株価の下落もあるかも知れません。
しかし、マネーサプライが増大していますので、このだぶついた資金は、やがては下がりきった株式市場に向かいます。また、インフレの芽も生みます。

特に日本ではバブル状態であった市場が下げたわけではなく、下げようもないほど安価に放置された市場が理論値の底を踏み破って(平均PBR1倍を切って)下げたわけです。
市場はあく抜けし、だぶついたマネーサプライは、市場を遙かな高みに押し上げるでしょう。
危機はチャンスでもあり、当然に投資資金を投入し続けた方、あるいは適切に投入できた方は、その後、資産を守り、増大させることが出来るではないでしょうか。

また、通常、考えられる不動産はテレワークの推進と共にオフィス需要が減少し、価値があまり保てなくなってくるものと判断しています。
ですから、不動産へ向かう資金も証券市場に投入されることでしょう。

富は一部の人々や国に益々偏在して行きます。
もちろん、世の常ですが、勉強しないロバでも、のろまな亀でもなかった人、危機に行動を起こせる胆力のある人のところに富は集まることになるでしょう。
チャンスの女神は前髪しかありません。
掴めなければ、社会に文句を言うばかりで、自分で自分の人生を何もコントロール出来ない生活に甘んじるしかありません。

バブルと止まらないインフレも

現在日本には、平成バブル期に預金開始されて、そのまま凍結された高齢者の880兆円が眠っています。
タンス預金としてもかなりの額(50兆円程度)があるものと推定されます。また、企業の内部留保300兆円があります。

これらはインフレ傾向が強くなれば、一気に市中に出て来る可能性があります。そして、出てくれば、益々インフレを加速します。
この引火物の起爆装置を新型コロナによる異次元の資金供給が果たすかも知れません。

また、日銀の国債買い入れによる資金も600兆円程度、日銀当座や市井に滞留しているものと思われます。
全部合わせて1800兆円あまりです。
1年間のGDPが約500兆円、政府予算が100兆円の国での話ですから、このインパクトがお分かりでしょうか。

預金のみに費やし、通貨に寄り添う人々は、通貨価値の下落と共に財産価値の大部分を失うことになるものと思われます。

ここでのキーワードも二極化です。
そして、格差社会と格差世界です。行動が出来なければ、二極化の不幸な一方、常に他の誰かに生殺与奪権を握られていることから抜け出せない日々が続きます。

危機がさらに深化する場合

インフレがさらに加速することもあり得ます。一応、以下も考慮に入れて置いて下さい。

戦後の大インフレ対策のために幣原内閣によって行われた新円切替はご存じでしょうか。
強制預金ののち、預金凍結、生活資金などの一部を新円での引出として認め、残りは旧円として破棄しました。
旧円の額面の国債なども同様です。つまり、通貨や通貨債券の消滅処置です。
この時、預金や円通貨しか持ってなかった方は、一瞬にして、ほぼ破産したのです。1946年2月16日夕刻のことでした。

この時の国のGDPに対する借金比率に、今現在は僅差でせまっています。新型コロナ対策での赤字国債の発行で、確実に上回ることになります。

つまり、戦後並みの大インフレが起これば、通貨が紙切れ同様になってもインフレを放置するか、新円切替で通貨消滅措置を行うか、消費税50%以上などの重税を課すか、この3つしかありません。
ここまでならないように祈っておきますが、起こってしまえば、誰がどう反対しようと、最終的にはどれかを決断するしかないわけです。
ただし、大増税はインフレ抑制効果が現れるのに時間が掛かり、その前に社会と経済が破壊されますので、取りにくい政策だと思われます。

どこまで考慮に入れる必要があるかは、現在進行形のさらに果ての世界ですので、今はまだ、朧気な思考の1つとしたいと思います。
ここまで至るシナリオでも、円通貨しか持っていない方は、厳しい事になるものと思われることをのみ、示して置きます。

未だ未確定な未然

これらは現時点で、当面、私が観測し、想定しているルートです。
もちろん、各時間的な推移は、そもそも新型コロナが影響を及ぼす期間が確定していませんので、推定すらも出来ません。
また、どうなるか、どこまで進んで行くのかも不明です。

道中、厳しいことも書きましたが、もしかしたら、一生に一度のチャンスになります。
すべてが終わってから、したり顔で解説しても意味がありませんので、早めにあなたが未来を思考するたたき台の1つとしたいと言う事です。

無いとしていますが、当然に世界恐慌へ進むというルートも否定はしきれません。ご自分で判断してください。
ただし、大恐慌というと短絡的に現物資産、特に金地金と思われる方が多いのですが、当時のアメリカは懲役10年の罰則付きで金地金を国民から没収したことにも留意してください。

このように、どのルートでも、行き着くところまで行けば、何でもありの世界になります。
思考に箍を嵌めず、訪れる危機の深度によっても、行動を修正する必要もあります。

しかし、危機はチャンスでもありますので、チャンスの女神の前髪を掴まれることを期待しています。
いずれにしても、女神が微笑むのは、思考を現実化させる「行動」をする人だけです。