ターニングポイント

数年前から断続的に書いてきた、日本や日本の株式市場への見通しの集大成、帰結点、つまり、フォーラムで示していたものも含めての私の考えを纏めたものです。
もちろん、日本市場と、あなたにエールを送るものになっています。

フェニックスは火の鳥

日本の株式市場は、1878年7月(明治11年)に東京株式取引所(東株)にて、始まりました(開業は5月ですが、始めは公債の売買だけでした)。

第一波動

株式は、1878年7月に先行した東京株式取引所株を始め、9月には第一国立銀行が上場しました。
第一国立銀行上場時の平均株価は136円でした。

そして、1920年3月に549円のピークを迎えます。約41年強後。
当時は単純平均しかなく、約73倍の分割を考慮すると、およそ300倍になっています。

その後、下がり始めます。
ほぼ23年後、1943年(昭和18年)6月、戦時統制機関への改編で、全国の11株式取引所が、日本証券取引所に統合され、東京株式取引所は幕を閉じます。
1945年8月(昭和20年)に終戦、日本証券取引所も解散します。

これが第一波動です。約41年の上昇、23年強の下降。

第二波動

1949年5月、戦後閉鎖されていた株式市場は、東京証券取引所を主要な取引所として取引を開始します。
始値172.86円(日経225の遡及計算)でした。
その後、乱高下して、翌年の1950年に85.25円まではありましたが、程なく上昇に転じます。

その後、ほぼ40年後の1989年12月、38915.87円のピークを付けて、平成バブルが崩壊します。
1950年の安値85.25円からは456倍でした。

崩壊後、相場はその後23年間下降を続け、2013年のアベノミクス相場の開始まで待たなければ成りませんでした。

第二波動です。約40年の上昇。23年強の下降。

第三波と現在

23年の下降を経て、2013年、アベノミクス相場の号砲(1972年以来の41年ぶりの上昇率56.7%)で、上昇に転じました。

判で押したような法則的な動き、これはなんの波動でしょうか。
40年~41年強の上昇、23年近辺の下降。
いずれにしても、又も同じ波動が始まっていると思われます。
既に上昇開始から10年以上経過しましたし、平成バブルの高値の3万8915円87銭をも超えました。

株式相場の世界には、アノマリー(Anomaly)と言う言葉があります。
説明が付かない事象。経験則です。
なぜか分からないけれども、そうなることですが、やがて理由が明らかになることもあります。

信じるも信じないもあなた次第という都市伝説のうたい文句がありますが、理由の説明がしにくいだけで、これは伝説ではなく、歴然たる事実です。
問題は、今後も同じような法則で動くかどうかで、その判断はあなたにお任せするしかありません。

しかし、又も23年の下降を経てきっちりと上昇に転じましたので、二度あることは三度あるとなる可能性はかなり高いと私は思っています。
となると、2053~54年頃までは日本株の上昇期になります。

これは私の作っている月足チャートで戦後の去年までですが、法則に付合していますね。そして、過去の高値を抜いてきています。曲線は近似曲線です。

冷戦の終了と、冷戦の開始

1989年ソビエト連邦のゴルバチョフ書記長は、ブッシュ大統領とマルタ島で会談し、冷戦終結を宣言しました。
冷戦の終了と、その後のソビエト連邦の崩壊です。

1989年は、まさしく平成バブルの崩壊の年でもありました。

日本は戦後の冷戦下に於いて経済成長をしてきました。そして、冷戦の終了と共に、経済低迷に入りました。
つまり、冷戦の終結で、覇権国家アメリアの目下の敵はソ連から日本になった訳です。
冷戦の終了の観測を受けて、プラザ合意、日米半導体協定など、数々の理不尽な施策が日本をターゲットに放たれます。
日本は失われた30年に入っていきました。

そして、今、中国の台頭です。新たな冷戦が始まりました。
アメリカのナンバーワンの敵は日本から中国に移りました。

新冷戦下の経済の開始です。

現在、台湾有事を想定して、半導体のサプライチェーンを日本を始め、世界中に逃がしています。
現代社会では、半導体は戦略物資です。
台湾が中国の手に落ちれば、世界の半導体生産の70%程度が支配されます。

かつて世界の半導体の50%以上を作っていた日本には、半導体の生産基盤が残っていました。
材料、製造装置などなどで、半導体材料の世界シェアの約半分は日本が担っています。中には世界シェア100%の物品も存在します。
当然の如く、多くの半導体工場が日本で新に建設されています。

半導体は産業の要だけでなく、軍需物資でもあり、半導体が無ければ、情報機器も兵器も作れません。電化製品も車も船舶も航空機も発電所もビルも何も作ることは出来ません。

そして、半導体のサプライチェーンは、他の物作りのサプライチェーンを再構築します。

もちろん、日本で生産するためには、為替水準が重要です。
昨今の円安は、何らかの合意、あるいは黙認のなせるわざと思われます。人為的な円高政策のプラザ合意の呪縛から解き放たれたのです。
そして、円安はその他の製品の輸出にも、より良い影響を与えます。

インフレは福音

日本は、デフレからインフレ下の経済に移りました。
そもそも通貨は紙切れに過ぎませんし、発行量の上限は決められていません。
つまり、通貨の価値が継続的に下落して行くのは理論的にも普通の事象です。

ですから、デフレというのは、本来異常な現象です。1990年台からのデフレを切っ掛けにして、異常な時代を育みました、失われた30年です。

デフレからインフレに移って来た理由は様々ですが、基本的にはインフレには、成るものです。

そして、インフレ経済は消費の拡大、企業業績の拡大を招きます。
経済というのは、ほぼ名目です。
他になんの影響がなくても、100円のものが120円に値上がりすれば、1.2倍の売上増とそれに伴う利益増になります。
そして、従業員に向けても給金の増額余地が出てきます。

また、通貨価値の下落は、単純に株価の上昇を招きます。
資産と言うのは富を生むものです。インフレ下で、通貨と株式と、どちらを資産と考えるかは明らかです。

日本の経済と株式市場はインフレで特に加速する

FRBなどは、インフレを警戒していますね。
インフレ下で経済が活況を呈するのならば、警戒する必要は無いと思われる方もいらっしゃるでしょう。

米国やその他の国々と、日本は違います。
米国は借金消費社会です。
インフレでクレジット消費が滞りますし、金利の上昇も生活者に重くのしかかります。

ところが日本は、貯蓄社会です。
インフレは通貨価値の下落をもたらしますので、日本では消費行動に拍車が掛かります。
買い控えではなく、今のうちにと買い進みます。
現在は、まだ買い控えの行動を取る消費者が多いかも知れません。
しかし、現在の様にインフレ率3%以上が続けば、耐久消費財など、早く買って置かないと損をすると言う行動に移っていきます。

日本ではこのようにインフレは経済の活況をもたらし、株価の上昇をもたらします。
日本でインフレと円安が、株価の上昇をもたらすのは、歴史的な事実です。

また、貯め込まれた2230兆円もの(2024年)個人資産、やがてはインフレに煽られて、我先にと市場に入ってくると思われます。
現在の東証の時価総額は、1000兆円。その一部でも恐ろしいほどの影響があります。

平成バブルの時は、個人資産の三割が株式市場に流入して来て、途方もない高みを作り出しました。
現在の個人資産の積み上げは、その時代の比ではありません。
そのたった10%でも223兆円、それが1000兆円の市場になだれ込んで来たらと考えると、恐ろしいものがあります。

米国市場の動乱

明けない夜はない、地球が回る限り」で米国市場のアンバランスをお話しました。

やはり、大きな下落がありました。
執筆時現在は、力強い再上昇を示していますが、見える景色は変わってきています。

世界の機関投資家の米国一辺倒の投資傾向は、影を潜めました。
米国だけでは不安、そして、そこには割安に放置された、大きな時価総額の株式市場がありました。それが日本です。

執筆時現在、日本市場への海外投資家の買いは13週連続の買い越しになっています。

米国市場はまだ上値を追う可能性は高いと思っています。
しかし、日本市場は常に意識される市場になりました。

今はそれで充分です。
やがて、動乱のたびに、大きな資金が遅れてなるものかと入って来るのが目に見えています。

AIと人口減少期

AIは、世界を変えます。

好むと好まざるを得ず、私たちはこれから、AIが当たり前に存在する時代を生きていきます。

ところで、10年ぐらい前、AIの開発黎明期に、創造的な仕事以外は、AIに職を奪われると言われていました。
それは完全に間違っていました。
創造的な仕事こそ、まず始めにAIに奪われて行っています。
音楽も、絵画も、動画制作、設計も、執筆も、プログラムも、創造的なものは、AIの得意なものに成りました。

伊藤園のCM、AI制作。

もちろん、単純作業はなおさらAIには、朝飯前の世界です。
日本はロボットに抵抗感のない社会です。
最初は抵抗感があったようですが、現在は高い日本語処理性能を持つNTTの「tsuzumi」など、驚くほどに企業にAIが入り込み、活用されつつあります。
さらに加速化して行くでしょう。

嬉しい誤算なのか、深刻な誤算なのか、AIは考えられていた以上の事をなしています。
DXとAIとロボットで、少子高齢化はほぼ心配はないものと思われます。むしろ、人余りのほうが心配になります。

AIやロボットは、日本経済に取っては、生産的な事象をもたらすことでしょう。

人口減少期にAIの時代に入っていく日本は、まるで神の采配のように、非常に運が良いと思っています。

資源と国力と将来像

日本オワコン論などを唱えている愚か者は、いつの時代にもいました。
無知としか言いようが無いと言いますか、あり得ないのです。

失われた30年、その間にGDPは急落したのでしょうか、追い越されていったのでしょうか。違います。
まだまだ世界3位、4位でしたね。
失われた30年の間に日本から奪えなかった、その他の百何十カ国の国々は、遊んでいたのでしょうか。いえ、出来なかったのです。
大国は腐っても大国です。それだけの技術的格差と礎があります。

国土も支える

日本は小さな島国という言い方があります。あまりに自虐的な言い方、あるいは無知な言い方です。
大きな島国と言う言い方なら、まあ、間違いではないでしょう。

日本は、世界の国々の面積を並べてランキングを作ると、上位3分の1ぐらいの所にいます。

現在、よく使われる世界地図は、メルカトル図法で作られています。
この欠点として、緯度が低い地域は小さく描かれると言う事です。

実際に、ヨーロッパに同じ尺度で日本をもって行くと、何カ国にも渡っている強大な島国です。

そして、周辺の厖大な海はすべて日本のもの、排他的経済水域は、世界6位の面積です。

資源小国という言い方が成されることもありますが、活用されていないだけで、日本には厖大な資源が眠っています。
地熱資源は、世界3位。開発すれば日本の電力の一定部分を賄えます。
また、厖大な海洋面積を利用して、最近、事業化が始まった海洋風力。そして、海洋太陽電池、潮汐発電。

何よりも排他的経済水域で試掘が始まっている、メタンハイドレート、マンガン団塊、レアメタル、コバルトリッチクラスト、熱水鉱床、 海底油田、天然ガスなど。
多くのプレートが集まっている日本近辺は、埋蔵資源量は厖大。世界的にも資源の宝庫です。
近日中に商用開発が始まる鉱区もあり、技術の進歩も相まって、実現性は様変わりの状況です。

さて、20~30年後、技術大国で資源大国の超大国の日本が出現しているかも知れません。

分水嶺

日本経済と日本市場のターニングポイントは、あなたの分水嶺でもあります。

目を瞑り、よく考えて見て下さい。
もし些末な事象に揺らぎが見えたとしても、真実はどこにあり、大局はどこにあるのか。
失われた30年は果たしてこのままま続くのか。恐慌に至った1920~31年のデフレ期も終わりはありました。
1990年代後半からのデフレも終わりを告げたばかりで、暫くデフレに戻ることはないでしょう。
実は今はかなり明るい時代なのです。

あなたの常識と世界の常識、歴史の常識。運命の輪はなぜ回るのか。

日本の未来の姿と、世界の姿。
そして、あなたはその時、どこにいるのか、どこにいたいのか。

人の行く裏に道あり花の山、いずれを行くも散らぬ間に行け。