まだ、言及していませんでしたが、RIZAPグループは、堀田丸正(8105)のM&Aを発表しています。

今までのM&Aと少し違うのは、二人を残して、始めから取締役を入れ替えると言う事です。
さらに代表取締役社長も、RIZAPグループ側の人間に交代します。

この事柄に付いて、少し書いてみようと思います。

RIZAPグループと人材

急成長をしている新興企業では、人材が不足することがあります。
もちろん、優秀な人々が起こした成功した事業ですので、不足はないとも言えるのですが、創業した若い人たちのサークル活動のような取締役会になってしまう事もあります。

急成長をして瓦解した某企業も同じでした。一人を除いて、クラス会の延長のような取締役会でした。
経営者は優秀でしたが、脇が甘くなり、思わぬところから足元をすくわれたと言う事でしょう。
また、いくつかの急成長企業では、社長が**天皇と呼ばれるようなワンマン状態で、社内が一種の宗教や体育会系の異常な状態になり、ほどなく表の場から消えていくことになります。

それに引き替え、RIZAPグループは、創業社長こそ若いのですが、他の取締役はそれなりの人生経験と共に優秀な経営能力を持った方々ばかりです。
子会社に派遣している経営者も同じです。

RIZAPグループで、まず注目すべきはもちろん、ジョンソン・エンド・ジョンソン、日本コカ・コーラなど数々の会社で社長職を歴任して来た、新将命(あたらしまさみ)氏でしょう。
有名であり、著作も多く、知らぬ方は少ないと思います。

2011年に住友商事のアドバイザリー・ボード・メンバー(諮問委員会)を退任して、RIZAPグループ(当時は健康HD)の取締役に就任しています。
住友商事と比べると、当時の豆乳クッキー屋に毛の生えたぐらいのRIZAPグループ(健康HD)では、あまりに不釣り合いでした。

しかし、新将命氏は、のちの瀬戸社長とのメディアでの対談で「男気に男が惚れた」と語っています。
そもそも瀬戸社長は、新将命氏の講演会を聞きに行き、我が意を得たりと面会を申しこんだようです。
そして、この面会が、男気に男が惚れるに繋がるわけです。

RIZAPグループは、いつも優秀な人材を招聘しています。
この新将命氏の力とも言えますが、むしろ瀬戸社長の魅力が大きいのではないでしょうか。

最近は表に出られていないので、既に退社されたかもしれませんが、低糖質レストランを実験的に運営していたころ、元日本マクドナルド社長の藤木努氏も健康フードサービス(現在のライザップイノベーション)におられました。

現在、提携関係にある伊藤忠商事の岡藤社長とも、ライザップを展開する以前からの知り合いだったようです。

瀬戸社長が商談していた伊藤忠商事の担当者に、岡藤社長と面識があるが覚えておられるかな、と語ったところ、岡藤社長に伝わり、もちろん覚えているとも、飯でも食おうになり、今ライザップをしてるのか、すごいというやり取りののち、岡藤社長がライザップの会員になったと言う事らしいのです。
これらは、岡藤社長が雑誌で語っています。

伊藤忠商事とは、みずほ銀行での繋がりもありますが、瀬戸社長が小さな会社のころから、多くの経営者の方と面識を持っていることがよく分かるエピソードです。
新将命氏の時と同じように、色々な場で物怖じせずに交流を広げているのがよくわかります。

これらが他の新興企業と違い、いつも適格に優秀な核になる人材をRIZAPグループに招聘出来ている理由ではないでしょうか。

もちろん、瀬戸社長自身も経営力があり、豆乳クッキー、美顔器、ライザップ、飛躍を遂げる事業の場面場面で、指導力を発揮しています。
特にジェルの定期購入を条件に、980円で美顔器を販売することに対しては、社内総出の反対を押し切って成功に導いています。

しかし、ワンマンということではなく、人の話をいつまでもどこまでも聞く社長だと言う事です。
社長室もなく、専用の机もなく、社内を転転として、指示や報告を聞くときは自分から出向いて、社内でも交流を広げているようです。

厖大な分野を要するこの会社は、瀬戸社長でなければ成り立たない、瀬戸社長だからこそ、急成長を遂げているとも思われるのです。

子会社への人材派遣

RIZAPグループは、健康ホールディングスや健康コーポレーションのころから、M&Aに注力し、赤字会社を立て直すと言う事を繰り返して来ました。

それでも、M&Aをした会社の経営陣を入れ替えることは極力避けて来ました。
しかし、経営陣の総入れ替えを始めて行ったことがあります。
グループのシナジーだけではどうにもならない赤字が続いていたエンジェリーベの立て直しです。

ここで問題になっていたのは、カタログの廃止です。
カタログの制作には一億円以上の経費が掛かります。配布にも経費が掛かります。

一方、データを調べて見ると、顧客はWEBで注文をしていました。マタニティの会社ですから若い女性が多いので当然かも知れません。
しかし、データーを示してみても、なお経営陣は、「カタログを廃止したら、売り上げが半分以下になる」と、頑なに主張し続けました。

仕方なく、経営陣をRIZAPグループ側(当時は健康側)に総入れ替えをして、カタログを廃止し、WEBを充実させました。
すると、売り上げが減るどころか増え、みごとに黒字転換しました。

似たようなことは、イデアインターナショナルでも、SDエンターテインメントでもありました。
一部の取締役を派遣して、旧経営陣に任せていました。
もちろん、経費節減などは、上手くいくのですが、赤字企業には赤字になった理由があります。

結局、両社ともほぼ1年後、一人を除いて経営陣を総入れ替えして、直ぐに黒字転換をしています。
一人を残したのは、過去のいきさつを知る人物も必要と言う事でしょうか。
夢展望も、社長をRIZAPグループ側に交代して、すぐに黒字転換しています(前期下期から)。

これらは、RIZAPグループ側が派遣する経営陣の優秀さがよく分かるいくつもの事例です。

今までは一年程度は、旧経営陣に任せて様子を見ることが多かったのですが、最近は分かってきたような感じもあり、マルコもそうですが、かなり早く経営陣の交代をする例も出て来ています。

堀田丸正と社長交代

さて、M&Aをした堀田丸正ですが、最初から社長や経営陣を二人残して交代します。少し異例です。

RIZAPグループは、そうしなければ、結局、良くならないと、もう分かってきたからでしょうか。

おそらく違います。
堀田丸正は低迷していますが、かつてのイデアや夢展望とは違い、赤字続きで退場寸前の企業ではありません。配当も出しています。

また、堀田丸正のM&Aは、仲介会社が介在したものではなく、瀬戸社長と堀田丸正の社長は元々知り合いであり、意気投合して、M&Aを決断したようです。

堀田丸正のIRを見ても、今までのヤマノホールディングス(以下ヤマノ)の傘下では、シナジーが出ないと主張しています。
ヤマノが株式をRIZAPグループに直接売らなかった事でも分かると思いますが、ヤマノから持ちかけられた話ではありません。

堀田丸正の社長との交流関係の中で持ち上がった話であり、やや謀反の趣もありますが、ヤマノは追認したと言う事でしょう。
ですから、RIZAPグループのM&Aの話題の株価上昇を期待して、少しでも利益になるように市場での売却となったのでしょう。

今までのRIZAPグループを見ていると、そして、特に交流のあった経営陣を、いきなり交代と言うことは考えにくい話です。
この場合、おそらく堀田丸正の経営陣が、瀬戸社長に託したと言う事なのだろうと思っています。

代表取締役社長につく、大西雅美(おおにしまさよし)氏は、RIZAPグループが招聘した人物で、現在は、傘下の三鈴や馬里邑の社長であり、マルコの取締役です(マルコは退任が決まっています)。

三鈴は2001年から製造小売業(SPA業態)であり、RIZAPグループが目指す、第二のユニクロのSPA業態のマイクロ版です。
そして、パンティストッキングや肌着等を生産していた会社、プラスナイロンの社長でもありました。
※プラスナイロンはアパレルで提携している伊藤忠商事とも関係する中堅製造会社です。

まさしく大西氏は、製造部門を仕切る適任と言えます。

堀田丸正はニット製造などのM&Aを繰り返して来た会社であり、今後、アパレル部門の製造会社のM&Aを堀田丸正によって行っていくのではないでしょうか。
残した二人の取締役の矢部和秀氏は財務や管理の専門家であり、下野隆充氏は製造の専門家のようです。堀田丸正でM&Aを主導した人物のような気もしないでもありません。

希薄化もありますが、製造分野を束ねて行く様相もあり、堀田丸正を参考銘柄にします。執筆時177円。堀田丸正の現在の株価