寄らば成長する大樹のNTT

ご存じNTT(日本電信電話)、たぶん普通であれば私が取り上げることはない巨大企業ですが、現状の株価、配当利回り、リスクヘッジ、未来展望などの理由でこの巨人を取り上げます。

様変わりしつつあるNTT

NTT法改正

少し前、NTT法の廃止の検討がありまして、結局、改正になりました。
主な変更点は、社名の変更が出来るようになった事、研究成果の開示義務の廃止、固定電話の設置義務の緩和、外国人役員の一部登用許可、などなどです。

まだまだですが、これで民間企業としての当たり前の競争力を持てるようになりました。また、海外進出、共同研究などがしやすくなりましたね。

特に社名変更は大きいと思っています。
電信はもうありませんし、音声コミュニケーションは残りますが、電話そのものは斜陽産業です。
グローバル・テクノロジー・ソリューション(GTS)の案も出ているようです。
本年6月に社名案が出てきますが、略称のNTTは正式社名の中に残すとは思っています。

株価下落と成長株

NTT法改正議論は、事業の足かせを外したいNTTと、防衛費捻出のために政府の持株32%程度を売却したい政府の思惑で始まりました。
結局、政府の持株を担保として防衛費などを捻出すると言うことで、NTT株の売却はなくなりました。

しかし、売却での需給の悪化の恐れでNTTは売られ、また、増収減益(後述)でも売られました。
執筆時現在、150円近辺。配当利回りは、3.5%前後です。

また、NTTは、20年間で配当額を分割換算で、10倍以上にしています。知られざる成長株です。

安心安全

通信需要は景気後退期でも減少しません。最強のディフェンシブ株です。
株価も異常に上昇しすぎていたITバブル崩壊時こそ急落しましたが、リーマンショック時もあまり株価は下がっていませんし、24年の8月の下げでも5%程度しか下がっていません。

景気後退時でも金融危機でも、安心して持っていられます。一生の保有株として考えてもよろしいかもと思いますね。

しかし、安定企業で有りながら、大きな成長を内包した企業です。

IOWN構想は世界を救う

IOWNは、Innovative Optical and Wireless Networkの略で、NTTが推進する次世代通信網です。
端的に述べますと、動線を光に置きかえ、最終的には光半導体で、電子から、光へ、通信や処理網を変更しようとしています。光電融合。
電力使用量100分の1、速度125倍、容量200倍というようなもの(正確ではありません)です。

もちろん、研究途上の物ですが、補助金も経済産業省から452億円、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からも400億円以上出ていて、研究が加速しています。

先ずはサーバー間の光化、基盤間通信の光化、基盤内通信の光化などと進んで行き、最終的には、光半導体(チップ全体の光化)になります。
これは世界の年々増大するデーター量、サーバの電力使用量、発熱、遅延の問題を解決するものです。
2026年から、一部のIOWNの商用化が始まります。

IOWN構想には、KDDI、 ソフトバンク、ソニー、米(Intel、Microsoft、NVIDIA、レッドハット、Apple、メタバースなど)、ノキア 、トヨタ自動車など、215社以上が参加しています。

また、世界の主要大学30校と提携して、IOWN技術者の育成もしています。
日本でも東京大学や京都大学などが参加しています。

IOWNはまごうことなく世界を救い、変える技術です。市場規模は100兆円以上になるものと思われます。
特許料収入だけでも年間数兆円になるものと想定されています。

もし、このNTTのIOWNが世界のスタンダードになれば、天文学的な利益が舞い込んできます。
もちろん、強力なライバルも存在していますが、NTTは特許をかなり押さえていると言う事です。

様々な挑戦

IOWNだけでなく、人工知能(AI)の開発販売もしていますし、次世代の6Gも開発中です。データーセンターも世界3位になっていますが、さらに推進しています。
トヨタと共同で自動運転車の開発、スカパーと提携して宇宙でのインフラ構築も進めています。
このように、巨大なハイテク企業に様変わりしています。

また、銀行業に参入する意欲を見せており、携帯料金などの決済を取り込み、単純に利益が増すと思われます。

際立つ研究費

6GやIOWN、AIなどを含め、今後5年間で成長分野に8兆円、トータル12兆円の研究費を投入する予定です。均して年間2.4兆円ですね。

増収減益はありましたが、この研究費の捻出が主な理由と思っています。

纏め

現状の株価であれば、どなたでもお奨め出来ると思います。

NTTは20年ぐらい増配をしていますし、定期的な自社株買い(トータル30%)もしていますので、株主還元意欲の強い企業だと思われます。
また、配当性向はまだ30%程度ですので、今後も増配は続くと思われます。
現在の株価は現状の下限近辺、これ以上の下げ余地は少ないものと判断しています。
さらに下がることがあれば、買い下がっても良いかも知れません。

時価総額は13兆円ぐらいですが、全国に巡らされた光ファイバーの価値だけで40兆円と言われ、この13兆円は非常に少ないと思われます。

おそらく市場は、IOWNの実現性を低く見ていると思っています。
しかし、参加企業の増加も留まることがなく、世界中で実証実験が行われています。
国際電気通信連合で基本プロトコルの80%が承認済みで、国際標準化に近づいています。因みにNTTの6Gは既に国際標準化済みです。

私が色々なところで書いていますが、世界を変えるのはテクノロジーです。

現状の利益低下も研究開発投資と、データーセンター投資と、ドコモの販促費用等、将来の成長投資がかさんでいるためであり、まだまだこれから利益が伸びると考えます。

また、25分割がありましたので、株価が安く、NISAの枠の余りで買うことも出来ますし、SBI証券の積立購入に設定して、少しづつ買うことも出来ます。
現状、145円~160円を行き来していますが、この株価近辺なら、安定企業と言う意味でも、文句なしに注目銘柄とします。