アベノミクスの第一の矢、黒田日銀総裁の金融緩和をロイターは、異次元緩和、黒田のバズーカ砲と表しました。

このように世界が驚くような思い切った政策は、良い悪いを問わず、日本の政府が実行する事は、今までありませんでした。事なかれ主義、問題の先送り、政策の小出しばかりだったのです。ところが安倍内閣の強い要請で、今までとは違う驚くほどの短期間で、日銀内をまとめ上げ、大規模に実行したのです。

当サイトの前回の記事で、アベノミクスについて語りました。それを補足する形で、今後の見通しと考慮事項に言及します。

日本にとっては思い切った政策

このように大胆な政策が実行されたのは、政権交代が普通に起こるようになったためでしょう。
問題の先送りをしていても、安穏と過ごすことが出来た過去の中選挙区制と違うのです。今まで日本が思い切った政策が出来なかったのは、日本だからでは無く、ひとえに中選挙区制だったからです。果敢な政策に打って出る事が出来るのは、小選挙区制の二大政党の国の交代期か、独裁国家しかありません。安穏と過ごし、又は政策が悪ければ、民主党のように次の選挙で大敗をするのですから、プレッシャーが違います。
基本的に私は制度論者です。選挙である程度の期間をおいて、大きく動くと言うことが大切だと思っています。おそらく民主党の政権が一年ぐらいで倒れていたり、次も民主党であったら、自民党によっても民主党によっても、思い切った政策が取られることも無かったでしょう。この点で三年あまりの民主党政権は、日本にとって有意義だったと思っています。

デフレとインフレ

インフレは需要が大きく、供給が少ない場合になります。デフレは供給能力が大きく、需要が少ない場合になります。 通貨の供給の過多過小ではありません。

大幅な金融緩和ですぐにでもハイパーインフレが起こるような危険を言う人がいますが、経済の基本も知らない方です。歴史上、パイパーインフレが起こった国は、戦争などで生産設備が壊滅した場合や、特殊な場合に限られます。生産力があり、需要が停滞した現在の日本では、ほっておけばデフレになります。

最も人々が幸せに生きることが出来る条件は、数%のインフレが続いていくことです。貨幣価値は少しづつ下がり、人は必要な物は我慢せず買おうとします。供給力は大勢では少し足りなく、設備投資がいつもされます。通貨は十分供給され、通貨供給のために債券などは中央銀行に吸収されます。すると債券価格は上昇し(利回りは低下)銀行は債券運用では無く、貸出金を増やします。それによって貸し渋りは無くなり、生産に投資されます。人々も貯金だけで無く、資産の形成や投資に向かいます。それがまた社会や経済を発展させます。

通貨というのは日銀のバランスシート上、借用書で、単なる紙切れです。軽いインフレが起こり続けるのが普通だと思います。デフレは社会を壊滅させますが、デフレが一番悪いのは、貯金だけして何もしない、何も考えない人々が一番得をする世の中になってしまうからです。物は安くなっていきますので、失業者の傷みが自分に降りかからなければ、それで構わないと考えるような人々を増やしてしまいます。果敢に挑戦していく意欲のある方を淘汰してしまいます。

途方もない国

過去の自民党の数々の政策ミスや先送り、民主党政権の有効需要の大幅な削減と失政、国家観の無い偏向したマスコミによって扇動される何も考えない人々。異常な円高、異常な株価の低下。生産工場の海外移転。ハイテク企業の没落。衰退する農業。東北大震災での膨大な富の喪失。安全保障上の懐疑。印象とスローガンによって行われる実害ばかりの争論。

それでも、現在の日本の姿はこうです。 GDP世界三位。世界最大の債権国。200年以上続いた世界の企業7200社中、日本の企業が3000社以上の強靱企業力。そして、平均寿命世界最長近辺。深夜に女性が一人で歩けるような犯罪率最低。

2000年以上続く歴史と国。国民金融資産1500兆円。1億人以上の高学歴な人々。有効需要を作り出す圧倒的な中間層の厚さ。他国にくらべ圧倒的に多い友好的な国々の数。そして、排他的経済水域面積世界6位。

途方もない国です。まずこの事実を受け止めましょう。

日本は再び成長を始める

さて、以上お話したように、正しいデフレ対策を行えば、かなりの確率で成功する可能性が分かると思います。

高齢化社会で日本は停滞するのが当たり前というような論理、労働人口低下で成長出来ないという、印象論が多くありますが、労働力が減って成長が止まったという例はありません。敗戦後、成人人口の比率が低下し、労働力が低下しても、多くの国は大発展を成し遂げています。 少子化で移民によって、もしくは外国労働者によって成長を持続した国も多くありますが、要は生産力と、需要です。

人手を多く必要としている産業もありますが、少し前や、他の国と違い、生産には多くの人は要らなくなっています。 ロボット生産の無人工場も存在するという現実が、今の日本です。もちろん、中小企業でも生産性は高まっていますし、事務の生産性も高まっています。

労働力不足が生産性の低下に及ぼす可能性は、過去と比べ格段に少なくなっています。そもそも、生産力が過大で、需要が少なく、デフレになっていたのが日本です。高齢化が生産力低下に及ぼす影響は過小です。

需要ですが、日本の8割以上を占めているのが国内需要です。日本には膨大な国内需要基盤が存在します。 幅広い需要を作り出せる人口の9割にも及ぶ中産階層の厚みです。この圧倒的な厚みは、他の国にはありません。

アベノミクスによってここが刺激されれば、莫大な需要が生まれます。元々日本は輸出入の比率は低いのです。日本という国の規模が膨大ですので、少ない比率でもかなりの額があるいうだけのことです。

そして、異次元的金融緩和の副次的な作用で円安が始まっていますが、まだまだ異常な円高の是正の段階だと思います。

この円安はほぼ壊滅してしまった家電やハイテク機器の輸出を復活させます。業界はかなり苦境ですが、低下しているとはいえ、厚い国内需要によって、産業基盤そのものが壊滅してしまったわけでは無いからです。

デフレによる国内需要の低下と、円高によって低下していた産業基盤は、そして、その生産余力は、まずは日本の経済の牽引力になります。

最近、早々と日産は米国工場の建設予定を変更し、国内工場の拡張を選択しました。こうした流れは、これからも続いていくでしょう。 これは異次元的な金融緩和、黒田のバズーカ砲と評されたような圧倒的で大規模なことをしたからです。

これは強い揺るぎない意志を示した事になり、経営者に安心感を与える効果があります。普通、金融緩和だけでは、企業の方針をこれだけ変えることは出来ません。今までに無いことをしたので、ゴーン氏が確信して動いたのです。この意味では、第一の矢、金融緩和だけでも、大きく成功に向けて動き始めています。

しかし、基本的には有効需要を作り出す、第二の矢の公共事業がどのように行われるかを見守る必要があります。

日本の公共事業は、半分以下に減っています。これを1980年代ぐらいの水準に戻すことが出来れば、インパクトが大きいでしょう。

私としては、ここで世論やマスコミの国債増発の批判などを恐れて小出しにするようでは、すべてが無駄になると思っています。必要な物はインパクトです。東北の復興もあります。トンネル老朽化事故がありましたが、老朽化した公共施設、道路の改修の錦の御旗があります。どんと、バズーカ砲を撃ってほしいものです。

私の見通しとしては、麻生太郎が財務大臣である限り、相当なことをすると思っています。彼は経済に明るく、アベノミクスは彼の持っている経済論が中心だとも思っています。(一般的に自民党の経済思想は、麻生氏などの景気刺激成長論と、かなりの勢力の緊縮財政再建論者に二分されます)

アベノミクスの第三の矢の成長戦略は、新しい産業にどのような見通しと、財政出動や規制緩和を考えているかは、不明です。やってみなければ分からない、何が成長していくか分からないという意見もありますが、ある程度の分野の想定はあると思っています。私の考えはありますが、確信はありませので、今は述べないで置きます。ただし、この三段目のロケットが点火したとしても、最終形であり、先のことで、しばらくは二本の矢で動いていくのが現状でしょう。

経済と株価の動き

しばらくは金融相場が続きます。その後、公共投資によって動く産業が出てきて、その効果が色々な所に波及して行くでしょう。株を持たざるリスクが現実の物となると思っています。

私はアベノミクスを、このまま減速しないで続けていけば、大きく失敗するというようなことはないものと思っています。成功するか、効果が少ないかのどちらかだと思えます。株価もそれにつれ、動いていくでしょう。

注意するのは、韓国経済と、中国経済の破綻です。これは少なからず日本にも影響を与えます。

韓国は日本とは違い、経済の半分程度を輸出に依存しています。そして、財閥系の企業がGDPの7割以上を占めている異常な国です。国内金融が未発達、資金の蓄積もありません。IMF管理になった事があるのはご存じだと思います。 繁栄を謳歌していたのは、異常な円高だったからです。これ以外に見るべき物はありません。

日本製品がいくら優秀でも、5割も7割も高かったら、まあまあ使える韓国製品を購入しますよね。この理由で韓国のサムソンなどに、日本のIT産業は太刀打ち出来ませんでしたが、このハンディが無くなります。そもそも、韓国は日本の材料や生産物供給が無ければ、半導体一つ作れない国です。総合的な技術力の差は圧倒的です。日銀の金融緩和による円安は致命傷になります。 現在、韓国は失業者の山です。富の大部分を財閥が独占しています。円安によって日本のハイテク家電などの輸出が改善すると、韓国はただならぬ状態になると思います。

中国は、日本のアベノミクスが無くとも、ただならぬ状態です。

元を大量印刷してバブルを作りだし、リーマンショックを乗り切りました。そのバルブが崩壊寸前です。中国の主な輸出先の欧州が不況で、非常な苦境にあります。統計が粉飾で信頼出来ません。ですから、経済の本当の実体を国の指導者さえ知りません。 金融機関が未整備で、政府系金融機関は政府系企業への隠し負債に満ちています。中国には日本に相当する中間層の需要がありません。内需は公共投資が大半です。

財政危機は行き着くところまで行っています。一党独裁で政権は腐敗に満ちています。報道されないだけで、暴動は毎日起こって弾圧されています。反政府の新唐人テレビなども、世界50カ所に拠点を設けて反政府放送活動をしています。アメリカには共産党崩壊をにらんだ暫定政府が存在して活動しています。

米国や欧州の企業は、数年前から、中国から撤退を始めています。HPも生産拠点を東京に移しました。貧困の差が現実離れをして拡大をしています。共産党幹部に富が押さえられ、その共産党幹部も海外に資産や家族を逃がす人が多くいます。共産党党員の脱退を援助する人々も存在し、脱退も増えています。 崩壊させることが出来ないバブルが臨界になっています。アベノミクスによって、円安が始まりました。

以上、事実のみを羅列しましたが、中国崩壊は大地震と同じです。今日か明日か、いつ起こるか分かりませんが、このままでは、起こる可能性があるのでは無いでしょうか。要注意です。

アベノミクスを一番批判していたのが、どこと、どこの国であったかを考えれば、その苦境が分かると思います。

ただし、その二国にとっては日本は甚大な貿易国ですが、日本にとってはGDPの1、2%しかありません。元々日本のGDPは内需がほとんどです。実質的な影響は少ないはずです。もしそれで株価が暴落したら、下がりきったところで買い向かいましょう。