当サイトの注目銘柄の健康コーポレーション(RIZAPグループに改名予定)は、いくつかのM&Aを発表しています。
私事ですが、入院中の発表であったため、未検討でした。遅ればせながら、言及します。

数々のM&A

4月18日にJASDAQのパスポートのM&Aは発表済みでありましたが、続けて4月28日に三鈴と、東証二部のマルコのM&Aを発表しています。(本年は他に、タツミプランニングと、日本文芸社のM&Aがありました。)

パスポートと三鈴は共に店舗販売を主体にしたところですが、特にパスポートは自主企画製品3割程度の小売会社の性格の強いところです。
マルコも200店舗以上の厚い店舗網を持っていますが、どちらかと言えばサービス拠点の意味もあり、主軸は製品企画が主体になります。

おそらく三鈴はアパレル部門の店舗展開の要のための買収であり、パスポートはイデアインターナショナル(3140)の製品販売の店舗での展開の要になるものと思います。
パスポートの企画力は比較的に弱く、イデアはデザイナーを多く抱える企画主体の会社で販売力に課題がありました。この両者の組み合わせは親和性が良く、最も良い果実を手にするのはイデアでしょう。

三鈴は非上場会社であり、交渉の過程が明らかではありませんが、パスポートに関しては、健康は市場価格に対して2分の1以下の一株117 円の価格を提示して、パスポート側の安すぎると言う反論に対して、明確に引き上げを拒否しています。
つまり、高ければ買わないと言う事で、おそらく店舗以外の価値(この会社で無ければと言う会社としての独自性)は見ていないわけです。雑貨の店舗網が手に入る会社であれば、パスポートで無くても良い、店舗網なら他の選択肢はあるという事でしょう。

マルコは異例?

これに比べ、マルコは市場価格の約半分の一株40円を提示して、安すぎるという抗議に対して、50円に引き上げています。当初提示に対して25%ものアップです。
これだけであれば、交渉の過程の駆け引きに過ぎませんが、こういった差は色々な所に現れており、健康側からの共同の新プログラムの開発意欲表明など、ライザップとのシナジーをことさら重視しています。また、ライザップの株式をマルコが取得する(させる?)ことも提携に入っています。

何よりも明らかなのは、パスポートに派遣する取締役が香西哲雄氏1名なのに対して、マルコへの派遣は、新取締役会の半数の3名です。
派遣が決まっている岩本眞二氏は、現在エンジェリーベの社長で、スタイライフ創業者、健康CPのアパレル部門の重鎮として招聘した人物です。大西雅美氏は、現在、馬里邑や三鈴の社長でアパレルに造詣の高い人物です。加來武宜氏は、ライザップ、その他の取締役で、健康CPの社員弁護士です。

今まで業績が振るわず、業を煮やして経営陣のすべてを健康側の人間に総入れ替えしたことはありますが、始めから取締役会の半数、3名をM&Aした会社に派遣するのは、健康CPとしては異例です。
このように、ざっくりと見ただけで、力の入れ方が違う感じがします。

さて、マルコは、体型補整下着の企画開発と直営販売をしている会社です。
生産は伊藤忠商事を通して行っており、伊藤忠商事の持分法適用会社でした。健康側は、M&Aをする会社を探していて紹介されたと言うことでなく、伊藤忠商事からの働きかけで、資本業務提携の交渉に着いたようです。通常、こういった場合、伊藤忠商事から何らかのアイディアや提案があったものと思われます。
補整下着はダイエットや肉体改造などを行っているライザップとの親和性が高く、またアパレル分野としてみても、女性下着の企画販売のノウハウや信頼出来る協力工場の取得ができます。
マルコも顧客の減少や赤字への転落から脱する一助に、伊藤忠商事からの紹介助言で健康CPとの資本提携を指向したようです。

マルコは、現在、伊藤忠商事から社長が派遣されていますが、二期連続で赤字となっています。
補整下着は単価の高いもので、消費動向の影響を受けやすく、ちょっとした購入意欲の減衰で、赤字や黒字を繰り返す側面があります。
販売に関しては、店舗の社員もほぼ元顧客であり、顧客からの紹介販売が主のコアな口コミによる販売網です。
マルコは20代の女性の顧客が7割で、下着をプレゼントするというキャンペーンなどで、顧客の友人を店舗に来訪させてもらうなどが行われています。そのためか、若い女性の認知は高いのですが、一般的な補整下着の利用者の30代以降の女性の認知が低く、現社長の時代から諸策を講じていましたがあまり成果はないようでした。

社員数が2000名以上、店舗の数は200店舗以上。店舗は奥まったところにあり、販売はほぼ紹介ですが、販売した補整下着のメンテナンスに人件費を投じています。つまりマルコの高価な補整下着は、その後のメンテナンスの費用とも言えるわけです。
さて、その販売管理費や一般管理費に約60億円を投じています。これが固定費のようなものになっています。そこで補整下着の粗利を見てみますと、約5割です。

粗利が非常に大きく、限界利益が高い利益構造になっていますが、大きな販売管理費(店舗費用)がのしかかり、販売額が減少した場合、赤字に転落し、販売額が上昇した場合、店舗費用はほぼ固定ですので、高い利益が保証されるわけです。
ただし、販売はほぼ紹介販売で、売れても経済動向による消費意欲によって若干上向く程度ですので、薄氷の上を行ったり来たりと言った所です。もちろん、それでも本年度で130億円程度の売り上げはあります。

マルコの再生

つまりマルコは、開発力もあり、生産は伊藤忠商事系列により生産技術も保証され、顧客は49万人おり、低迷時にも紹介販売力により一定の販売量は確保できる会社です。
しかし、ここに一定の比率で販売量がプラスされれば、販売経費が回収できた後、粗利5割の威力が爆発的に出てくるわけです。
今期、38億円の赤字ですが、ほとんどが特損であり、現在程度の販売成績で7~8億円の赤字です。これを埋めるのはそれほど難しくはないのではないかと思います。

まずは健康CPから取得した費用でのライザップばりのCM。今までほとんど広告に頼って来ていませんでしたので、ある程度の増加は期待できます。また、マルコの場合、紹介販売力が期待出来ますので、顧客の獲得費用は少々高くても元が取れます。
マルコは、20代の女性が主な客層ですので、夢展望の160万人の若い女性の名簿の活用も考えられるでしょう。

次ぎにライザップで理想的な体型になった女性へ体型維持の訴求、もしくはもっと踏み込んだ要望への訴求。
補整下着は高いものですが、ライザップの費用が払える女性であれば、安く感じるでしょう。マルコはその後のメンテナンスに力を入れていますので、ライザップのような会員組織に馴染みやすいでしょう。また、粗利はライザップ程度の高さがあり、双方のタイアップの共同企画がしやすいと思われます。

また、マルコの補整下着は顧客の7割が若い女性であることでも分かるとおり、補整下着としては非常にファッション性が高くなっており、デザインを取り出すだけで、普通の下着として販売できる余地があると思われます。
もちろん、普通の下着では訴求が弱いので、高級下着として、プチ補正の性能を有している機能性下着で、ファッション性が高いものならば、健康CPのアパレル販売網で売ることが可能です。
今までのマルコであったら、僅かな補正性能を有している機能性の高い下着の販売機会がありませんでしたが、これからは、中間的なものを開発販売していけます。

さらに、表明されているライザップとの新しいプログラムとはなんでしょう?

伊藤忠商事とライザップ

伊藤忠商事ですが、健康CPにマルコを紹介し、筆頭株主の座を降りるわけです。苦境のマルコを救うこと、もちろんそれが目的です。
しかし、それだけが目的でしょうか?
もちろん、マルコは伊藤忠商事として勝算あり、しかしそれだけで無く、ライザップの有益性は、伊藤忠商事の社長の岡藤正広氏が身をもって体験して、折しも今、ことあるごとに言及しています。

この岡藤氏は、三井物産と住友商事という財閥系の商社を押しのけ、3300億円の利益をたたき出して王座奪取をした一種の天才商人、非資源ナンバーワン商社を掲げる雄です。今はライザップで減量して益々意気盛ん。
まだまだ、絡んで来そうな気がしますが、どうなのでしょう?

当サイトの見解

マルコは、以上を持って、当サイトの参考銘柄にします。執筆時現在、142円、本日の株価
健康側が約6割の株式を取得しますので、株主総会の特別議決が必要で、6月28日に議決が通ってからの話になりますが、現在25%持っている伊藤忠商事が賛成の意向ですので、まず大丈夫でしょう。
今回の増資により、株式は希薄化しますが、ライザップグループとの提携により、5割の粗利でもし販売が伸びたらを考えるだけでも充分ではないかと思われます。
また、マルコ側が「(増資後に健康CPにならい)積極的に株主優待及び配当政策に取り組んでいく所存です。」と表明しているように、やがて株主優待の新設があるものと思われ、発表があれば株価に対してインパクトがあります。